2019 Fiscal Year Research-status Report
低酸素シグナルによる抑制性神経の発生制御機構の解明
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19K06680
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
酒井 大輔 金沢医科大学, 一般教育機構, 講師 (90632646)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Hif1α標的遺伝子 / 抑制性神経発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、まずDNAマイクロアレイ解析を行った。胎生13日目の野生型胚、およびHif1α-cKO胚の大脳を取り出し、RNAを調整した。当初予定していたLGEとCGEからのRNA調整は、LGEとCGEを分離するのが困難であったため断念した。DNAマイクロアレイ解析の結果、発現変化の相対比が2倍以上、かつp値が0.05以下の条件に当てはまる遺伝子として、発現上昇した遺伝子を104個、発現減少した遺伝子を26個見出すことに成功した。その中から、血管形成や代謝関連など、抑制性神経の発生に直接関与しないと思われる遺伝子を除き、残った遺伝子14種類についてin situ hybridizationによる発現パターンの解析を行った。そして、Hif1αの欠損により発現が上昇する遺伝子として、Fgf15、発現が減少する遺伝子としてTfap2dとGm10046を同定した。Tfap2dについては、抑制性神経が異所的に誘導される場所と異なるところに発現が認められたため解析対象から除外した。これらの結果から、Fgd15の過剰発現、またはGm10046発現抑制により異所的に抑制性神経が誘導できることが示唆された。そこで、Fgf15のcDNAをクローニングし、pEF-BOSベクターを用いた過剰発現用ベクターを作成した。また、解析に使用するin utero electroporation法の立ち上げを行い、胎生12日目の大脳腹側に遺伝子導入できることを確認した。Gm10046に関しては、i-GONAD法による遺伝子ノックアウトを行う予定であったが、遺伝子のサイズが大きいため困難が予想された。そこで、国立精神神経センターの井上先生にノックアウトマウス作製の共同研究を打診した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNAマイクロアレイ解析による候補遺伝子の絞り込みが想定以上にスムーズに行えたため、in situ hybridizationによる発現確認、さらには遺伝子機能の解析方法の準備および確認も今年度内に終えることができた。また、ノックアウトマウス作製に関しても、共同研究の確約をいただき、すでにノックアウトマウスの作製が開始されている。これにより、来年度へむけた十分な基盤作りができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Hydroxyprobeを用いた低酸素領域の可視化について、論文で報告されている方法に準じて行ってみたが、報告されているようなコントラストの良い画像は取得できなかった。低酸素レポーターマウスの導入も検討したが、現所属のマウス飼育室に十分な飼育スペースが確保できない。そこで、組織・器官内の低酸素領域の検出はひとまず保留とし、低酸素依存的に抑制性神経の発生を制御する因子の同定とメカニズムの解明を優先的に進めるよう、研究の方向性を修正する予定である。また、血管形成不全と抑制性神経の異所的誘導との関連性についても検討する必要性を感じている。そこで、血管形成を人為的に抑制する実験計系の構築も検討する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最も大きな理由は、申請時の所属先から現在の所属への異動があり、当初予定していた国際学会への参加を見合わせたことが挙げられる。この国際学会は2年毎の開催となるため、次年度は開催されない。そこで、学会参加の代替として、論文投稿による研究成果の公表を行う。次年度にも投稿費用を申請しているが、追加で論文投稿費用に充てたい。
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Research Products
(3 results)