2019 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージの機能が展開する脱分化の分子基盤解明と関連microRNAの同定
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19K06691
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
石丸 善康 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 助教 (50435525)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 再生 / 脱分化 / マクロファージ / 再生芽 / コオロギ / Notch / RNAi |
Outline of Annual Research Achievements |
フタホシコオロギ幼虫の脚を切断すると、切断面に未分化細胞群から構成される再生芽が形成された後、元通りに脚が再生される。しかし、未分化細胞を誘導する脱分化の分子メカニズムの知見はまだ少ない。我々は、マクロファージ様細胞を枯渇させてから脚再生実験を行ったところ、損傷治癒は確認されるが再生芽は形成されず、その後も再生しないことから、マクロファージ様細胞がコオロギ脚の再生芽形成に関与していることを見出した。再生芽形成に関わる因子の同定を目指し、マクロファージ枯渇個体と正常個体の脚切断組織においてトランスクリプトーム解析を行い、2群間で有意な発現変動を示す遺伝子を再生芽形成に関連する候補遺伝子として絞り込んだ。マクロファージ枯渇下で発現が減少している遺伝子の機能特徴として、Notchシグナル経路など細胞外マトリックス関連の遺伝子が多く含まれていた。RNAiによりNotchの機能解析を試みたが致死に至ることから、致死性が最小になるよう最適なRNAi条件を検討して脚再生実験を行った結果、再生芽が形成されずに脚再生が阻害された。また、Notch RNAiにより脚再生の初期過程において重要な機能を果たすEGFR, Distal-less, dachshundなどの遺伝子発現が抑制されることから、Notchシグナルが再生芽の形成に重要であることが示唆された。引き続きトランスクリプトーム解析から得られた候補遺伝子に対して同様のRNAiスクリーニングを行うとともに機能解析を遂行中で、再生への影響を示す遺伝子を幾つか特定することができている。さらに、脚切断から再生芽形成までの継時的な組織学的変化と各候補遺伝子の発現変動に着目して関連性を調べており、今後は再生芽の時空間的な形成を制御する分子メカニズムの解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マクロファージ枯渇下の再生脚と正常な再生脚とのトランスクリプトーム解析から再生に必要と考えられる多くの遺伝子情報を得ることができ、Notchシグナルが再生芽の形成に関与することが示された。一方、ジンクフィンガー型転写因子を含む多様な遺伝子が再生に関わることが明らかとなってきており、網羅的RNAiスクリーニング解析による再生関連の候補遺伝子の探索をさらに進めている。また、脚切断後から再生芽が形成される過程(0-144時間)を段階に分けて、qPCRによる候補遺伝子の発現解析と組織切片作製による再生芽組織の形態観察を行い、その関連性について検討している。また、候補遺伝子のRNAiを行った再生脚についても同様の解析を行っており、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)トランスクリプトーム解析から得られた遺伝子情報をもとに再生に関わる候補遺伝子の大規模なRNAiスクリーニングを引き続き行い、再生関連遺伝子を探索する。さらに、RNAi解析で明らかとなった再生関連遺伝子のCRISPR/Cas9ノックアウトコオロギを作製し、再生芽形成に与える影響を解析することで、脱分化に関連する遺伝子の同定を目指す。また、再生芽細胞の増殖制御に関わるJak/STATシグナル経路に対し、同定された脱分化関連遺伝子の関与を調べることで、脱分化再生に関わる一連の分子機構を明らかにしたい。 2)マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)機構を利用した遺伝子ノックイン技術CRIS-PITCh(Precise Integration into Target Chromosome)システムの開発を進めている。同定された脱分化関連遺伝子のC末端にCRIS-PITCh法を用いてGFP遺伝子をノックインすることで、再生芽の未分化細胞群をGFP蛍光標識する。GFP標識された未分化細胞の挙動を追跡(タイムラプスイメージング解析)することで、再生芽の時空間的な形成様式を可視化して解析することが可能となり、機能解析へのアプローチとして再生に関連する遺伝子の探索が容易となる。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究を進めていく上で、再生芽形成に関わる遺伝子を探索するためにマクロファージ枯渇条件下で発現変動している遺伝子の大規模なRNAiスクリーニングを優先して遂行しており、当時予定していたゲノム編集(CRISPR/Cas9)による再生関連遺伝子ノックアウトコオロギの作製が遅れている。平成31(令和元)年度の研究費に未使用額が生じたが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費を含めて今年度行う予定の研究計画と併せて実施していく。
(使用計画) 使用計画は以下のとおりである。 RNAiによりスクリーニングされた再生関連遺伝子のCRISPR/Cas9ノックアウトコオロギを作製して詳細な機能解析を行う予定である。また、同定した再生関連遺伝子の遺伝子座にGFPをノックインさせた系統を作製し、再生芽の時空間的な形成様式を可視化して解析する予定である。
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Research Products
(6 results)