2021 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージの機能が展開する脱分化の分子基盤解明と関連microRNAの同定
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19K06691
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
石丸 善康 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 講師 (50435525)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マクロファージ / 再生芽形成 / Notch / Sp9 / zinc finger homeobox 4 / RNAi / コオロギ |
Outline of Annual Research Achievements |
コオロギ再生脚の再生芽形成にマクロファージの機能が関わることを明らかにしてきた。マクロファージの枯渇条件下で再生阻害された脚と正常な再生脚の2群間でRNA-seq解析を行い、発現変動する遺伝子群を同定した。その遺伝子群の中には、神経や筋細胞の分化に関わるzinc finger homeobox 4(zfhx4) 遺伝子が含まれており、RNA干渉(RNAi)による遺伝子機能阻害を行った結果、再生芽は正常に形成されるが、附節のパターン形成に関与することを見出した。最遠位部に爪は形成されるが、第1と第3附節が正常に伸長せず、短縮化することが明らかとなった。また、組織切片のHE染色では、附節の円周状構造が萎縮して形成されていることが確認された。さらに、脚再生とパターン形成に関連する遺伝子(STAT, Notch, EGFR, Dll, dac)と細胞増殖に関わるcyclinEの発現を調べた結果、各遺伝子の発現には影響を及ぼさないことから、Zfhx4は附節のパターン形成に関わる分子メカニズムの下流因子として、細胞の増殖ではなく、おそらく分化の制御に関与することが示唆された。 一方、発現変動する遺伝子群には、自然免疫において重要な役割を果たすToll受容体も含まれており、Toll受容体をコードする遺伝子11種類のうちToll2に対してRNAiを行った結果、再生芽が形成されない表現型を示した。Toll2 RNAiでは、再生芽細胞の増殖に関わるcyclinEとJak/STATシグナル経路を活性化するサイトカインunpairedの発現が低下しており、またマクロファージの細胞数も減少していた。これらの結果から、マクロファージはToll2の発現を介してunpairedを誘導し、Jak/STATシグナルの活性化がcyclinEの発現を上昇させ、細胞増殖を促すことで再生芽を形成することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Toll2のRNAiを行ったコオロギ再生脚では、再生芽の形成不全もしくは不完全な形態となる表現型が観察され、細胞の増殖が低下していた。マクロファージが機能する再生芽形成に、NotchとSp9に加えてToll受容体の関与が明らかとなった。一方、Zfhx4は附節のパターン形成とその後の伸長を制御するために必要な因子であることが示唆された。 本年度の計画では、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)機構を利用した遺伝子ノックイン技術CRIS-PITCh(Precise Integration into Target Chromosome)システムを用いて、新たに同定された再生関連遺伝子NotchとSp9のC末端に蛍光マーカー遺伝子GFPのノックインを行い、再生脚における発現細胞の特定と再生様式の可視化を目指していた。さらにノックアウトコオロギを作製してより詳細な機能解析および野生型との発現比較解析を予定していたが、いずれも系統作製に至っていないため、当初の予定より遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、RNAi解析で明らかとなった再生関連遺伝子のCRISPR/CasノックアウトおよびGFPノックインコオロギを作製し、再生芽の形成に与える影響と時空間的な再生芽の形成様式を詳細に解析する。さらに、ノックアウトと野生型の2群間でRNA-seq解析を行い、その再生関連遺伝子によって制御される下流標的遺伝子を探索して、再生芽形成に関わる一連の分子メカニズムを明らかにする。 再生芽を形成して正常に再生するには、上皮様細胞の脱分化と再分化が鍵となる。NotchとSp9の特異的発現細胞を特定することで、上皮と筋肉前駆細胞の細胞間における相互作用の有無や分子メカニズムを明らかにし、再生芽の形成メカニズムのさらなる解明を目指す。 また、再生脚と正常脚とのSmall RNA-Seq解析により、miRNAの網羅的な発現プロファイルの比較解析を行う。再生に関わる可能性がある候補miRNAの活性化・不活性化による再生への影響と再生関連遺伝子に対する発現解析を行い、再生芽の形成メカニズムに働くmiRNAの機能性スクリーニングを実施する。
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Causes of Carryover |
(理由) マクロファージ枯渇条件下で発現変動する遺伝子の大規模なRNAiスクリーニングを優先して遂行しており、当時予定していたCRISPR/Casゲノム編集による再生関連遺伝子のノックアウトおよびGFPノックインコオロギの作製が遅れている。令和3年度の研究費に未使用額が生じたが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費を含めて今年度行う予定の研究計画と併せて実施していく。
(使用計画) 使用計画は以下のとおりである。 再生関連遺伝子NotchとSp9のノックアウトおよびGFPノックインコオロギを作製し、上皮様細胞の脱分化と再分化、筋肉前駆細胞の細胞増殖、さらに上皮様細胞と筋肉前駆細胞の細胞間相互作用に関わる分子メカニズムを解析する予定である。また、再生関連遺伝子の発現制御に関わるmiRNAの機能性スクリーニングを実施する予定である。
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Research Products
(3 results)