2019 Fiscal Year Research-status Report
内皮-造血転換における血流メカニカルストレス作用機構の解明
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19K06692
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 有紀 九州大学, 医学研究院, 准教授 (90508186)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内皮-造血転換 / アクアポリン / メカニカルストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
造血細胞は、胚発生期に背側大動脈の血管内皮細胞が分化転換することにより産生される。この現象は「内皮-造血転換」と呼ばれる。内皮-造血転換を経て血管から遊離した造血細胞群は、肝臓での増殖を経て最終的に骨髄まで移動し、造血幹細胞として維持される。内皮-造血転換は、胚性造血と成体型造血(骨髄造血)とを直接的に繋ぐ重要な分化転換現象であるが、扁平な血管内皮細胞から球形の造血細胞へと形態変化する際にどのような分子メカニズムが働くのかは不明である。本研究では、血流に起因する剪断応力刺激が内皮-造血転換に関わることを踏まえ、水チャネルAQP1を介しておこる血管内皮細胞の出芽・遊離現象を糸口として、AQPとの関わりが示唆されているメカニカルストレス作動性の転写因子KLF2およびCa2+チャネルTRPV4の機能解析を行っている。 これまでの研究から、KLF2がAQP1と同等の内皮-造血転換誘導能を有することが判明した。一方、RNA干渉(shRNA)、ゲノム編集(CRISPR/Cas9)の2種類の方法でAQP1の機能欠損実験を行ったが、内皮-造血転換への影響が認められなかった。この原因を明らかにするためAQPファミリー遺伝子群の発現解析を行ったところ、AQP3, 5, 8, 9, 11がAQP1と同様に内皮-造血転換過程で発現することがわかった。現在、これらの遺伝子群すべてについて多重ゲノム編集を行い、その影響を解析中である。 また、カルセイン-AM(細胞内へ流入すると加水分解され緑色蛍光を発する指示薬)の高速イメージング解析を行い、AQP遺伝子群を発現する造血性血管内皮細胞が高い水流入能を有することを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
重要な点であるにもかかわらず、本研究の立案段階では不可能と考えていたAQP遺伝子群を発現する造血性血管内皮細胞の水流入能について、その検出に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
光学顕微鏡での観察から内皮-造血転換の際にAQP1の局在が変化することが判明したので、電子顕微鏡観察(先端バイオイメージング支援プラットフォームの支援課題として採択)を行い、AQP1の細胞内局在を解析している。 AQP1機能との関わりが示唆されている転写因子KLF2については、ゲノム編集による機能欠損実験を行い、AQP1, 3, 5, 8, 9, 11の発現および内皮-造血転換への影響を調べる。
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Causes of Carryover |
実験で用いる試薬類および実験動物飼育資材の使用量を抑えることができたため、物品購入に対する支出額が当初計画よりも少なくなった。このために次年度使用額が生じた。研究は順調に進行しており、翌年度分として請求した助成金と合わせて試薬、実験動物飼育資材等の物品購入、実験動物飼育を補助するアルバイト学生への謝金、受託解析費用の支払いに充当する。
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Research Products
(2 results)