2019 Fiscal Year Research-status Report
Metabolic and epigenetic regulation of pluripotency via FLCN-RAG-TFE axis
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19K06693
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
遠藤 充浩 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (40391883)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須田 年生 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 卓越教授 (60118453)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 / 代謝 / リソソーム / 転写因子 / シグナル伝達 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
胚の着床前後では栄養代謝の相違が予想されるが、多能性への影響とメカニズムは不明である。着床前胚から作製される胚性幹細胞(ES細胞)と、着床後胚から作製されるエピブラスト幹細胞は、それぞれナイーブ型、プライム型と呼ばれる異なる形質を持つ多能性幹細胞である。ナイーブ型の多能性幹細胞の決定・維持に関わる主なメカニズムとして、固有の転写因子ネットワーク、細胞内シグナル (WNT-βカテニンなど)およびDNA脱メチル化活性の関与がよく知られているが、着床前後の栄養状態や代謝応答との関係はよく分かっていない。申請者は、アミノ酸センシング制御因子FLCNがリソソームのマスター転写因子TFE3の活性を抑制していることを見つけた。そしてFLCN-TFE3が形成するフィードバックループが、リソソーム活性調節を介してグリコーゲン代謝を制御しており、細胞の増殖分化に影響を及ぼすことを明らかにして論文発表した (Endoh et al., Cell Reports, 2020)。さらに、TFE3およびアミノ酸センシング因子RagGTPaseが、多能性幹細胞において分化抑制に関与すること、Wnt /β-カテニン受容体シグナルを正に制御することも明らかになった。今後、このFLCN-RagGTPase-TFE3/B経路によるWnt /β-カテニン受容体シグナルの制御メカニズムや、DNAメチル化等エピジェネティック機構とのクロストークに注目した解析を進めることにより、エネルギー代謝による多能性幹細胞制御についての新規知見の創出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Tfe3-GR発現ES細胞を作成し、Dexamethasone投与によりTfe3を活性化させたところ、LIF非存在下で分化抵抗性を示すことが分かった。Tcf/Lef応答性レポーター遺伝子を用いたアッセイを行ったところ、Tfe3の活性化によりWnt /β-カテニン受容体シグナルが増強されることが分かった。またTfe3の活性化により、ミトコンドリア呼吸と解糖の活性の両方が増加し、ナイーブ型多能性幹細胞に特有のエネルギー代謝状態が引き起こされることも分かった。次に、ES細胞で内在性発現が認められるTfe3とTfebの機能を調べるため、Crispr-Cas9システムを用いてTfe3が欠損したES細胞を樹立した。Tfe3欠損ES細胞では、Tfe3の直接標的であるlysosome関連遺伝子群の一部の発現低下が見られた。また、Tfe3欠損ES細胞においてWnt /β-カテニン受容体シグナルが有為に低下していること、テロメア長の短縮が起こっていることが分かった。ただ、このES細胞は少なくとも4カ月間正常に自己複製を続け、未分化性や分化能についても特段の異常は認められなかった。Tfe3機能がTfebにより補完される可能性を確かめるため、Tfe3欠損ES細胞においてCrispr-Cas9系によるTfeb欠損を試みた。Tfebのみ欠損したES細胞は樹立できたが、Tfe3/Tfeb両欠損ES細胞は樹立できなかったことから、ES細胞の維持にTfe3/Tfebの機能が必要である可能性が考えられる。現在Tfe3/Tfebコンディショナル両欠損ES細胞の樹立を進めている。上記に加えて、恒常的不活性型の変異RagCを発現したES細胞を作成したところ、Tfe3の恒常的活性化が起こり、LIF不存在下でTfe3依存性に分化抵抗性を示すことが分かった。以上により、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後以下の方策で研究を推進する。(1)TFE3/TFEBコンディショナル両欠損ES細胞を作成し、未分化性、多能性や自己複製能への影響を調べる。また遺伝子発現様式およびDNAメチル化等エピジェネティック修飾への影響について、次世代シークエンス解析等を用いて明らかにする。さらにエネルギー代謝の変化についてフラックスアナライザー等を用いた解析を行う。(2)FLCNによる多能性及び増殖の制御:FLCN欠損ES細胞を作成して(1)と同様の解析を行う。観察された表現型がTFE3/Bの活性化を介する可能性について、ノックダウン等の手法を用いて(レスキューされるか)確かめる。(3)Rag GTPaseによる多能性及び増殖の制御:マウスES細胞およびエピブラスト幹細胞におけるRag GTPaseの活性化状態を明らかにするため、GTP結合型およびGDP結合型の比率の測定を行う。また、RagC/D変異ES細胞を作成して(1)と同様の解析を進める。(4)FLCN-RagGTPase-TFE3/Bが、WNT-βカテニンのシグナル経路を制御するメカニズムの解析を進める。(5)Tfe3/Tfebの欠損マウスを作製し、胚盤胞期など初期発生への影響を明らかにする。(6)ヒト多能性幹細胞におけるFLCN-RagGTPase-TFE3/Bの役割について、上記1-4と同様の解析を行う。
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Causes of Carryover |
Tfe3/Tfeb欠損ES細胞における遺伝子発現やエピジェネティック修飾について次世代シークエンス解析を行う予定だったが、Tfe3/Tfebを両欠損したES細胞を樹立することが出来ず、これらの解析を行わなかったため次年度使用額が生じた。ES細胞の維持にTfe3かTfebのいずれかの発現が必要であることが判明したので、現在Tfe3/Tfebコンディショナル両欠損ES細胞株を樹立する準備を進めている。次年度内には、この方法で作製したTfe3/Tfeb欠損ES細胞を用いることによって上記の解析が完了する見込みである。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] A FLCN-TFE3 Feedback Loop Prevents Excessive Glycogenesis and Phagocyte Activation by Regulating Lysosome Activity2020
Author(s)
Mitsuhiro Endoh, Masaya Baba, Tamie Endoh, Akiyoshi Hirayama, Ayako Nakamura-Ishizu, Terumasa Umemoto, Michihiro Hashimoto, Kunio Nagashima, Tomoyoshi Soga, Martin Lang , Laura S Schmidt , W Marston Linehan, Toshio Suda
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 30
Pages: 1823-1834
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] High Mitochondrial Mass Is Associated With Reconstitution Capacity and Quiescence of Hematopoietic Stem Cells2019
Author(s)
Yuji Takihara, Ayako Nakamura-Ishizu, Darren Qiancheng Tan, Masahiro Fukuda, Takayoshi Matsumura, Mitsuhiro Endoh, Yuichiro Arima, Desmond Wai Loon Chin, Terumasa Umemoto, Michihiro Hashimoto, Hidenobu Mizuno, Toshio Suda
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Journal Title
Blood Advances
Volume: 3
Pages: 2323-2327
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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