2019 Fiscal Year Research-status Report
ショウジョウバエ発生過程における中枢神経系グリア細胞の脱分化を支える分子基盤
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19K06696
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
加藤 健太郎 杏林大学, 医学部, 講師 (30733068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟崎 健 杏林大学, 医学部, 教授 (60359669)
平井 和之 杏林大学, 医学部, 講師 (70597335)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脱分化 / グリア細胞 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に、分化した細胞は増殖しない。しかし、一部の分化している細胞は、例えば組織が損傷を受けたときなどに、再び増殖し、組織の修復に貢献することが知られている。どの様な仕組みでこのように分化した細胞が再び増殖できるのかは、十分に探索されているとは言えない。また、組織、種をまたぐ仕組みがあるのかについても知見は乏しい。申請者らは、ショウジョウバエの発生過程で、分化したグリア細胞が再び増殖を開始し、新たに異なる細胞種を生み出すことを見出している。本研究は、このグリア細胞の再増殖をモデルとして、分化した細胞が再び増殖できる様になる、その仕組みを明らかにすることを目的する。 本年度は、文献から候補とした遺伝子の同過程における発現とその役割を解析した。これにより、これらの遺伝子の一部は同過程で動的に発現を変えていくことを明らかにした。対象とする各グリア細胞種において、これらの遺伝子の発現抑制・機能抑制を行ったところ、実際に関与が示唆される遺伝子のリストを得ることができた。ただし、この実験では強制的に発現させた遺伝子により、発現そのものが抑制されてしまう場合があることが明らかになり、関連遺伝子の同定には不十分であることがわかった。そこで、細胞系譜にて遺伝子を強制発現させることによって、この問題を回避し解析を続けている。予備実験からは、分化したグリア細胞種の再増殖と分化していないグリア前駆体の増殖ではそれぞれ異なる制御があると示唆されていたが、実験系によっては相反する結果が得られ、遺伝子の発現量やタイミングなどによって複雑に制御されていることが示唆された。次年度に控えているノンバイアスな解析を進めていくためには、このような複雑さを整理して、より詳細に理解する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験計画に従って一般的な遺伝子強制発現系を用いて候補遺伝子の同過程への関与を調べた。これは予備実験を元に計画したものであったが、今回の解析から、発現させた遺伝子によって強制発現系そのものに影響を与えてしまう場合があることがわかった。これらの問題を回避するため細胞系譜にて遺伝子を強制発現させるアッセイ系に変更し、解析を進めている。以上により、やや遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従って行なった解析方法に問題があることがわかり、これに対処して新たな実験方法に切り替えている。今後の遺伝子の役割の解析については、同方法を用いて行う。それ以外の点については、研究計画に従って進めていく。
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Causes of Carryover |
次年度は、ノンバイアスに関連遺伝子を探索するために、関連細胞に発現している遺伝子を次世代シークエンスにより解析する。本年度に行った解析・検討から、このための試料の準備としてTRAP法ではなく遺伝子操作した脳全体を用いる方針に決めている。これにより一部の試薬等の購入の必要がなくなった。代わりに、次年度では脳全体からの試料調製に必要な試薬等を購入する予定である。また、候補遺伝子の役割を解析するにあたって、解析方法の変更を行なったため、一部に遅れがあった。次年度では継続して解析を行い、本年度未使用分はこのための試薬等の購入にもあてる予定である。
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