2021 Fiscal Year Research-status Report
ショウジョウバエ発生過程における中枢神経系グリア細胞の脱分化を支える分子基盤
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19K06696
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
加藤 健太郎 杏林大学, 医学部, 講師 (30733068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟崎 健 杏林大学, 医学部, 教授 (60359669)
平井 和之 杏林大学, 医学部, 講師 (70597335)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | グリア細胞 / 脱分化 / 増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ショウジョウバエ発生過程における中枢神経系の一部のグリアサブタイプの脱分化・増殖をモデルとして、分化した細胞が再び増殖できるようになる、その仕組みを明らかにすることを目的とする。 この仕組みに関与する遺伝子を探索するために、昨年度までに対象となる発生ステージの脳における発現RNAのリストを取得している。本年度は、これらの発現RNAを比較解析し、発現に変化が見られた遺伝子のリストから特に転写因子、シグナル分子のリストを取得した。また関連が推測された細胞内シグナル伝達経路に関して、発現変動は認められなかったもののこれらの経路に大きく関わるような遺伝子も解析対象とした。この結果、合計58遺伝子を候補としてあげることができた。 次にこれらの候補遺伝子から実際に関連する遺伝子の絞り込みをおこなった。対象とするグリア細胞におけるこれらの遺伝子の発現をRNAiにより低下させ、同グリア細胞に影響を与える遺伝子を探索した。この結果、表現型が弱かったものも含めて関与の可能性ある遺伝子として28遺伝子に絞り込めた。このうち特に顕著に影響を与えた2つの遺伝子(転写因子と転写コファクター)に焦点を当てて解析を進めた結果、どちらも発現抑制すると同グリア細胞の増殖、もしくは生存に影響を与えること、過剰発現させた場合には幼虫期における同グリア細胞の数が多くなることが明らかにできた。同グリアサブタイプの脱分化・増殖もしくは生存に働く可能性の高い遺伝子を同定することができたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
発現解析とスクリーニングによって新たな関連遺伝子を同定することができた点において順調に進捗しているといえる。また、このスクリーニングによって表現型が弱いものの他にも関連が期待される遺伝子を候補として挙げられたことも十分な成果と言える。一方で、同定した遺伝子の働きを調べるには、細胞レベルでの解析、すなわち細胞がどのような状態にあるのか、増殖するのか、細胞死を起こしているかなどを明らかにする必要があるが、この点については不十分であり今後の解析で押し進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
主に研究計画に従って進める。発現解析とスクリニーングによってに新たに同定した遺伝子とここまでの解析で関与を明らかにした遺伝子がどのように関わるのかを遺伝学的に明らかにする。また、ここまでの解析で不十分であった細胞レベルでの解析を押し進めたい。さらに関連遺伝子の発現操作によってどのような影響があるのかの解析の一環として、次世代シークエンスによる発現解析を組み入れることを新たに計画している。
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Causes of Carryover |
研究計画では、発現解析に用いる次世代シークエンスを外部業者に委託する予定であった。しかしながら、学内にて新たにシークエンス設備が導入されたことか ら、これを取りやめ学内の設備を使用した。これにより発現解析にかかる費用が抑えられた。本年度までの未使用分は、解析の精度を上げるための発現解析に関 わる試薬購入に充てる予定である。
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