2021 Fiscal Year Research-status Report
植物ペプチドホルモンRGFとその受容体を介した根の継続的な成長機構の解明
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19K06705
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
篠原 秀文 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (40547022)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植物 / ペプチドホルモン / 受容体キナーゼ / RGF / リガンド-受容体ペア |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の根の継続的な成長は、先端から地上部側に向かって存在するPLTタンパク質の濃度勾配が形成・維持されることで保たれるが、濃度勾配の形成・維持の機構は不明な点が多い。近年申請者はペプチドホルモンRGFとその受容体のペアがPLTタンパク質の濃度勾配を制御することを示したが、情報伝達経路の詳細は不明である。申請者はRGFによるPLTタンパク質の濃度勾配の制御機構の解明のため、PLTタンパク質の濃度勾配を調節する化合物の同定とそのターゲット因子の探索、およびRGF受容体の相互作用因子の探索を行い、各因子の機能解析を通じて、植物の根の継続的な成長のしくみを明らかにすることを目的とし、研究を行っている。 当該年度は、前年度までにGFP融合RGF受容体の機能的発現株をサンプルとした抗GFP抗体による共免疫沈降とプロテオミクスにより同定した、RGF受容体と相互作用する候補因子である膜タンパク質、プロトンポンプとRGFとの関係性について解析を行った。プロトンポンプ遺伝子を欠損したシロイヌナズナでは、外的投与したRGFへの応答能が低下することが示され、RGFとその受容体を介した根端メリステム維持機構、および植物の根の継続的な成長における新たな情報伝達経路の存在を示唆した。今後RGF受容体との直接的な相互作用の解析やプロトンポンプ阻害剤を用いた解析、RGF情報伝達系の下流ではたらく転写因子PLTとの関係性を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RGF受容体変異体にGFPを融合させたRGF受容体を発現させた植物体を作出し、RGF受容体変異体の根端メリステムが縮小する表現型を相補する株を得た。GFP融合RGF受容体発現シロイヌナズナの根由来のタンパク質抽出液をサンプルとして抗GFP抗体を処理し、Protein Aビーズによる共免疫沈降を行った。沈降画分のプロテオミクスを行い、RGF受容体と特異的に相互作用する候補タンパク質を複数同定した。同定された候補タンパク質のうち、ヒットスコアの上位であったAHA1およびAHA2に着目して解析を行った。AHA1およびAHA2は植物の細胞膜局在型H+-ATPaseであり、細胞外にプロトンを放出することでアポプラストの酸性化し、細胞伸長を促進することが知られている。シロイヌナズナの根では根端の分裂領域から伸長領域にかけて発現がみられ、RGF受容体の発現部位と局在が一致することから、RGF受容体の相互作用因子の有力な候補と考えた。RGF情報伝達系との関係性を探るためAHA1およびAHA2の変異体を作出し、RGF応答能を確認した。シロイヌナズナ野生型、AHA1およびAHA2それぞれの単独変異体ではRGFに応答した根端メリステムの拡大が観察されたが、AHA1およびAHA2のヘテロ変異体では、RGFの応答能が有意に低下することが示された。このことから、RGFの根端メリステム活性維持機構には、プロトンポンプであるAHA1およびAHA2が関与する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
RGF受容体と相互作用し、情報伝達経路に関わる候補として同定されたAHA1およびAHA2について更なる機能解析をすすめる。RGF情報伝達系の下流で機能する転写因子PLTのHA1およびAHA2変異体中での濃度勾配を確認する。またBiFC解析等により、RGF受容体とAHAとの相互作用の確認を行う。またプロトンポンプ阻害剤を用いた根端メリステム活性の変化を観察し、RGF情報伝達経路に関わる新たな因子として機能するかどうか確認する。 並行してPLTタンパク質の濃度勾配を調節する化合物のターゲット因子の探索を勧める。PLTタンパク質の濃度勾配を変化させる化合物A01およびA05のビオチン誘導体を用いたプルダウン解析を行う。シロイヌナズナ根由来のタンパク質抽出液をサンプルとして、ビオチン導入誘導体を作用させ、アビジンビーズでプルダウンを行う。共沈画分のプロテオミクスを行い、化合物と特異的に相互作用する因子の同定を試みる。化合物の相互作用タンパク質の候補が同定され次第、候補遺伝子の過剰発現株、変異株の作出と表現型観察、発現部位の解析、および化合物との結合実験などを進める。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)RGF受容体と相互作用する候補タンパク質の機能解析について、複数の候補タンパク質を解析する予定であったが、候補のひとつであるプロトンポンプに焦点を当てた研究に切り替えたため、消耗品の購入費が当初予定していた額を下回ったため。 (使用計画)比較的高価であるプロトンポンプ阻害剤や、タンパク質間相互作用を解析するための手法であるBiFC解析に必要な試薬類の購入費に充てる。またビオチン化化合物を用いたプルダウン実験のために比較的高価な磁性アビジンビーズを数種類試用する必要があるため、アビジンビーズの購入費に充てる。
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Research Products
(2 results)