2020 Fiscal Year Research-status Report
新規花粉管誘引因子の探索と花粉管誘引因子の機能的多様性の解明
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19K06706
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金岡 雅浩 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (10467277)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 植物有性生殖 / 受精 / 花粉管 / 胚珠 / トマト / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の種が維持されるためには、同種の配偶体を選別して受精することが重要である。被子植物の雌性配偶体は、花粉管の伸長や誘引を制御するシグナル分子を分泌し、同種の花粉管を選択的に受け入れる。これまでに、トレニア・シロイヌナズナという2種の植物の花粉管誘引因子LUREのアミノ酸配列を部分的に入れ替えることで別種の花粉管を誘引できることを明らかにし、またトレニアにおいて新規誘引因子CALL1を発見した。 本研究は、(1) 重要な作物種において花粉管誘引やin vitro受精を達成する実験系を確立し、(2) 花粉管の伸長を制御する誘引因子を同定すること、(3) 複数種由来の誘引因子の構造活性相関解析から、誘引活性を示すための構造の共通性、活性に種特異性をもたらすための構造の多様性について明らかにすること、を目的とする。これらの解析を通じて、花粉管の伸長や誘引を制御する因子の構造と機能について理解を深める。 今年度は昨年度に引き続き、(1)トマトでのin vitro花粉管誘引実験系の構築で用いた培地や、培養方法をさらに検討することにより、他のナス科植物でもin vitro花粉管誘引に成功した。この方法を用いて、ナス科植物種間で、in vitro花粉管誘引を検証することができた。また(2)について、トマト胚珠のトランスクリプトーム解析より同定したある遺伝子のノックアウト株で結実率が低下していることを確認した。この遺伝子は受精に関与している可能性が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は(1) 重要な作物種において花粉管誘引やin vitro受精を達成する実験系を確立し、(2) 花粉管の伸長を制御する誘引因子を同定すること、(3) 複数種由来の誘引因子の構造活性相関解析から、誘引活性を示すための構造の共通性、活性に種特異性をもたらすための構造の多様性について明らかにする、の3つのテーマから成る。(3)のテーマの達成のためには、(1)と(2)のテーマの進展が必要不可欠である。これまでに(1)の培養系の確立により、これまで花粉管誘引の研究がなされていなかった複数の種で実験系を確立して、種選択的な花粉管誘引がおこることを確認し、(2)の候補遺伝子の探索より得られた遺伝子が受精に関わる証拠が得られてきたため、本研究課題はおおむね順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)について、in vitroアッセイ系を他の種でも使えるよう構築し、様々な種間で花粉管誘引の程度を比較する。 (2)について、候補遺伝子のノックアウト株の受精における表現型を詳細に解析する。 (3)について、(2)で得られた候補遺伝子よりタンパク質を合成し、受精過程での機能をin vitroアッセイ系により調べる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により出張がキャンセルになるなど旅費として予定していた額をほとんど使うことがなかった。また、自宅で就業せざるを得ない時期が続いたため、大規模遺伝子発現解析など研究計画を一部変更して、進行中の実験に集中したため、当初予定ほどは予算を使わなかった。 今年度は研究成果をまとめるために技術補佐員を雇用して研究の速度を上げたい。
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Research Products
(4 results)