2022 Fiscal Year Research-status Report
コケ植物の仮根細胞における先端成長の分子機構とその進化的意義の解明
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19K06709
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
本瀬 宏康 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (70342863)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 先端成長 / 極性成長 / 仮根 / ゼニゴケ / 微小管 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞は極性を獲得して一定の方向に成長し、土壌への固着、水分・養分の吸収、光環境への応答、精細胞の輸送など、成長や生殖に不可欠な機能を果たしている。また、細胞の成長方向は、器官全体の形態形成を決定づける重要な要素となっている。 細胞の成長方向は、細胞骨格の微小管により制御されるが、微小管がどのように調節され、どのような機能を果たしているのか、未だ不明な点が多い。そこで、ゼニゴケの仮根細胞をモデル系として、成長極性がどのように決定され、安定に維持されるのか解析した。仮根細胞は、葉状体の地面側の表皮細胞が分化して形成され、その1ヶ所に成長点が確立し、フィラメント状に伸長する。この過程は先端成長と呼ばれ、種子植物の花粉管、維管束植物の根毛細胞、コケ植物の原糸体などで見られる。しかし、どのように成長方向が決定され、維持されるのかについてはほとんど分かっていない。本年度は、仮根細胞の成長を観察する培養方法を確立し、この方法を用いて、仮根細胞の成長方向を制御するNIMA関連キナーゼ(MpNEK1)の変異体を解析した。その結果、仮根の一定方向への成長が土壌への進入に必要であることを明らかにし、論文としてまとめた(Mase et al. 2022)。また、植物固有のアルマジロリピートキネシン(MpARK1)が、微小管束の形成とオルガネラの輸送を介して、仮根伸長を駆動することを明らかにし、論文を投稿した(Kanda et al. 2022)。また、MpNEK1の発現誘導株を用いることで、MpNEK1が細胞伸長と細胞分裂の両方に関わることを明らかにし、論文を投稿した(Mase et al. 2023)。加えて、MpNEK1と相互作用するタンパク質、MpNEK1によりリン酸化される新規なタンパク質を明らかにした。加えて、MpNEK1の先端への局在に必要なドメインを特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、仮根を観察する培養法を確立し、仮根の極性成長が土壌への進入に必要であるという論文をまとめることができた。また、植物固有のMpARK1キネシンが、微小管束の形成とオルガネラの輸送を介して、仮根伸長を促進するという論文もまとめることができた。加えて、仮根細胞の成長方向を制御するMpNEK1の発現誘導株を用いて、MpNEK1が細胞伸長と細胞分裂の両方に関わることを明らかにし、論文としてまとめた。更に、MpNEK1と相互作用するタンパク質、MpNEK1によりリン酸化されるタンパク質、MpNEK1の先端への局在に必要なドメインを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、特に難航しているMpARK1の投稿論文を出版までこぎつけることを目標とする。また、MpNEK1誘導系の論文、生殖器における機能、仮根イメージングの論文についても出版へと持っていきたい。MpNEK1と相互作用する因子やリン酸化される新規タンパク質については機能解析が進んでおり、インパクトの高い研究成果として結実させたい。
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Causes of Carryover |
国際誌に投稿中の論文の査読と改訂が長引いており、年度をまたいだ形で改訂稿の作成と投稿を行っているため、投稿費などを次年度に繰り越した。また、新型コロナ感染症の影響で、共同研究などが滞ったため、一部研究の遅れが生じたため。
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