2023 Fiscal Year Annual Research Report
シアノバクテリアのパートナースイッチング制御系による環境応答機構の解明
Project/Area Number |
19K06717
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
日原 由香子 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60323375)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シアノバクテリア / パートナースイッチング制御系 / 強光順化応答 / pmgA / アンチシグマ因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
シアノバクテリア Synechocystis sp. PCC 6803 (S.6803)においては、パートナースイッチング制御系のアンチσ因子と相同性を持つPmgAタンパク質が、強光下や光混合栄養条件下での生存に必須である。本研究では、PmgAのリン酸化標的として、パートナースイッチング制御系のアンタゴニスト様タンパク質Ssr1600を同定したことから、「パートナースイッチング制御系はいかにして、シアノバクテリアの光合成や代謝を制御しているのか?」の解明を目指している。当該年度は、pmgAとssr1600の破壊株および過剰発現株の表現型解析を行った。その結果を含め、期間全体を通じて得られた成果は以下のとおりである。1) γ-32P ATPを用いたリン酸化実験では、PmgAはアンタゴニスト様タンパク質のうちSsr1600のみを特異的にリン酸化したが、BACTH systemを用いた相互作用解析では、PmgAと他のアンタゴニスト様タンパク質 (Slr1856、Slr1859、Slr1912)との相互作用も検出され、S.6803細胞内でパートナースイッチング制御系の構成因子がクロストークし、複雑なシグナル伝達経路を構成している可能性が示唆された。2) Ssr1600はPmgAにリン酸化されることで細胞内に安定的に蓄積できるようになる。3) PmgAとSsr1600は、長時間強光下において、クロロフィル合成活性と、光化学系Ⅰ反応中心サブユニットをコードするpsaAB遺伝子転写産物の蓄積量を低く保つ制御に関与している。以上の結果より、PmgAとSsr1600から成るパートナースイッチング制御系が、アンチσ因子とσ因子の相互作用をアウトプットとする典型的な系とは異なり、アンチσ因子によって蓄積量が制御されるアンタゴニストをアウトプットとする、新奇性の高い系であることが明らかになった。
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