2021 Fiscal Year Research-status Report
概日時計リセット機構から探る緑藻の新奇光受容伝達経路
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19K06720
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松尾 拓哉 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 講師 (00452201)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 概日時計 / 緑藻 / クラミドモナス / ROC15 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
モデル緑藻クラミドモナスは赤などの長波長域の光に対する生理応答を示すが、それを担う光受容伝達機構は不明である。クラミドモナスにおいて、赤色光応答の代表例は概日時計のリセットである。リセットには可視光域のほぼ全ての波長の光が有効であるが、とりわけ赤色光の効果が大きい(Kondo et al., 1991, Plant Physiol., 95:197-205)。 研究代表者らは、これまでの研究においてクラミドモナスの概日時計のリセットの背景には時計タンパク質ROC15の光による急速な分解であることを突き止めている(Niwa et al., 2013, PNAS, 110:13666-71)。ROC15の分解誘導には、概日時計のリセットと同様に可視光のほぼ全域が有効で、やはり赤色光が特に効果的である。細胞が光を浴びるとROC15のリン酸化が起こり、その後、プロテアソームにより分解される。 今年度は、ROC15の分解に異常を来す変異体から研究代表者らが同定した遺伝子の解析を中心に研究を進めた。その結果、この遺伝子の変異体においては、ROC15の光誘導性のリン酸化及び分解は、可視光域のほぼ全域で失われていた。またこの遺伝子は、陸上植物には存在するが緑藻にはないと従来は考えられていたタンパク質をコードするという、予想外の事実が明らかになった。この成果は、緑色植物の光応答機構の進化に関するあたらな知見を提供するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予想していなかった結果が得られている。その結果は、本研究の目標達成において極めて重要であるのみならず、緑色植物の光応答機構の進化の解明につながる重要な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
同定した遺伝子の解析を進める。具体的には、コードタンパク質の発現リズムや光応答、ROC15とのタンパク質相互作用や細胞内局在を解析する。そのためにHAおよびFLAGタグを融合したタンパク質を当該遺伝子の変異体に発現させ、変異形質の回復を確認した後にタグに対する抗体を用いて解析を行う。次年度中の論文発表を目指す。
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Causes of Carryover |
感染症の蔓延により、当初予定していた計画通りの執行が出来なかったため。一方、研究内容においては予想外の進捗があったため、次年度使用額はその結果をさらなる解析に充てる。
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