2020 Fiscal Year Research-status Report
植物細胞系譜の多様性を生み出す転写ネットワークの分子メカニズム
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19K06722
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
白川 一 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70636969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥居 啓子 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 客員教授 (60506103)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / 転写制御 / 細胞分化 / 孔辺細胞 / ミロシン細胞 / マスター制御因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物は、高度に特殊化した細胞を分化させ、それらを秩序立って組み合わせることで生存戦略を発展させてきた。研究代表者は、進化の過程で生物が新しい細胞系譜を生み出した分子基盤の理解を目的としており、それは、遺伝子機能の転用や遺伝子の新機能獲得と考えられている。遺伝子の新機能獲得は、遺伝子の重複とそれに続く片方の遺伝子への変異導入によってなされている。しかしながら、遺伝子機能の変化と細胞種の多様化の因果関係は不明な点が多い。本研究では、植物の二つの特殊化した細胞【孔辺細胞とミロシン細胞】をモデルに、マスター転写因子の機能解析を通して、細胞種の多様化の分子メカニズムに迫る。具体的には、研究代表者が同定したCREAMsの機能を、遺伝学・生化学・イメージング解析により明らかにする。CREAMsは、孔辺細胞とミロシン細胞分化のマスター転写因子であるFAMAの下流因子として同定された。そのため、FAMAと類似した機能、もしくは、FAMAの機能の一部を担っていると考えられる。初年度に引き続き、CREAMsと相互作用因子の結合を複数の手法で確認し、作製したCREAMs変異体における孔辺細胞とミロシン細胞の表現型の解析を行なった。さらに、イメージング解析により、組織及び、細胞レベルでのCREAMsの発現部位を同定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FAMA転写因子の下流標的因子として同定したCREAMsの機能を、遺伝学・生化学・イメージング解析により調べている。CREAMsと相互作用する因子については、生化学的解析が順調に進んでおり、予想通りの進捗を得ている。遺伝学的解析については、CREAMsの変異体の作成はすでに終了しており、表現型解析についてもほぼ予定通り進んでいる。イメージング解析において、CREAMsの発現量が低いこと及び発現部位に明瞭な特異性がないことから、蛍光顕微鏡観察に予想より時間がかかっており、少し進捗が遅れている。総合的に評価して、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
FAMA転写因子の下流標的因子として同定したCREAMsの機能を、遺伝学・生化学・イメージングにより解析し、発見の成果を論文として発表する予定である。ほぼ予定通り進捗しているが、イメージング解析において、CREAMsの発現量が低いこと等の理由で、蛍光顕微鏡観察に予想より時間がかかっている。イメージング解析は、所属研究機関の共通の共焦点顕微鏡を使用しているが、令和3年度の夏ごろに新規の共焦点顕微鏡が導入されることから、研究を加速して進めることができると考えられる。オンライン学会などを利用しながら、適宜成果発表を行い、国際論文の作成を進める。平行して、CREAMsの機能をより深く知るために、transcriptome解析や、他のFAMA標的因子との多重変異体を作り、表現型解析・遺伝子発現解析を行う。
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Causes of Carryover |
遺伝学解析とイメージング解析において、部分的に進捗の遅れがあった。そのための費用として、次年度使用額が生じたため、計上した。
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