2020 Fiscal Year Research-status Report
サーモスペルミンによる植物遺伝子翻訳促進機構の解明
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19K06724
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 卓 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20271710)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ポリアミン / シロイヌナズナ / サーモスペルミン / mRNA翻訳 / 維管束 |
Outline of Annual Research Achievements |
サーモスペルミンは低分子塩基性有機化合物ポリアミンの一つで,維管束植物では木部分化の抑制に関わる。これまでの研究においてシロイヌナズナの変異体を用いた解析から,サーモスペルミンが特定の転写因子遺伝子の翻訳促進に働くことを突き止めた。しかし,その作用の分子機構は明らかでない。また,外的なサーモスペルミンは木部分化を抑制するが,その取り込み,輸送機構は不明である。本研究では,シロイヌナズナのサーモスペルミン非感受性変異,およびサーモスペルミンが翻訳促進する遺伝子群の応答解析から,サーモスペルミンが細胞内に輸送される過程,直接相互作用する標的分子の同定,特定mRNAを翻訳促進する分子機構の解明を目指して実験を進めてきた。 2020年度は,前年度までに得られていた,高濃度のサーモスペルミンに耐性を示すシロイヌナズナのサーモスペルミン非感受性変異株(its1-its11と命名)について,各変異の原因遺伝子の特定を行い,its1, its3, its7, its11の4つが,それぞれRNAメチル化酵素,RNAスプライシング関連タンパク,RNA結合タンパク,RNAシュードウリジン化酵素をコードする遺伝子に変異を持っていることを突き止めた。対応するT-DNA挿入変異株については,its1変異がサーモスペルミン非感受性を示すことを確認した。また,its11変異については,リボソームRNAのシュードウリジン修飾が低下していることを確かめた。以上の結果から,サーモスペルミンの作用にRNA修飾が深く関わることが強く示唆される状況に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各突然変異の原因遺伝子が同定され,RNA修飾がサーモスペルミンの作用に関わるという重要な示唆が得られた。トランスクリプーム解析を含め,今後の研究展開の見通しも立てられ,順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
サーモスペルミン非感受性を示す各変異の原因遺伝子がいずれもRNA,特にリボソームRNAの修飾に関わると予想される酵素をコードしていたことから,各変異のトランスクリプトーム解析から影響を受ける遺伝子を突き止める実験を進める。また,多重変異の作出を進め,表現型解析,遺伝子発現解析から各遺伝子の機能の関連について手がかりを得る。
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Causes of Carryover |
研究の進捗により,わずかな余裕が生じた。消耗品代として翌年度に充当の予定。
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