2019 Fiscal Year Research-status Report
AS2と核小体タンパク質による発現抑制を介した葉の分化制御機構の解析
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19K06730
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
小島 晶子 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (10340209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 広夫 金沢大学, 薬学系, 准教授 (30454367)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / 発生・分化 / エピジェネティック / 核小体 / DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
シロイヌナズナの核タンパク質AS2は、葉の発生・分化に関わる因子で、葉の裏側でETTIN遺伝子の発現をプロモーターへの結合、ETT遺伝子領域のDNAメチル化を介したエピジェネティックな制御を介して抑制している。AS2タンパク質が機能するためには、核小体近傍に塊状に局在することが重要である。今回、私たちは、AS2の核小体近傍での局在とETT遺伝子領域のDNAメチル化の関係を明らかにするため、複数のas2変異アリルを用いて、変異型as2タンパク質の局在と、変異がDNAメチル化に与える影響を解析した。 最初に、これらの変異as2タンパク質のDNA結合能を、AlphaScreenという手法で解析した。その結果、as2-5 は、DNA結合能があるが、変異の表原型を示すこと、as2-snp1 はDNA結合能がなく、機能しないことが明らかになった。2つのアリルはいずれも、核小体周辺のAS2 bodyへの局在が見られないことから、AS2のDNA結合に必要な領域とAS2の核小体周辺での局在に必要な領域は異なると考えられた。 次に、as2の各変異アリルと核小体因子RH10の変異がETTのDNAメチル化に与える影響について、私たちの研究グループが開発した、バイサルファイトNGSを利用した新しい手法(SIMON法)で、解析した。その結果、as2変異アリルにより、ETT遺伝子領域特異的にDNAメチル化レベルに異なる影響を与えることが明らかとなった。また、核小体因子RH10とNUC1の変異が、ETTのDNAメチル化に与える影響とも異なっていたことから、これらの因子は、協調的ではあるが、異なる経路を介して、ETT遺伝子領域のDNAメチル化を介した発現抑制に関わると考えられた。 as2変異タンパク質のDNA結合能とDNAメチル化レベルの解析結果は、AS2タンパク質の領域による機能の違いを示唆するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者の高橋らと開発したバイサルファイト処理とNGSを利用した解析法(SIMON法)で、野生型と核小体因子NUC1の変異体、as2変異アリルにおけるETT遺伝子領域などのDNAメチル化レベルを、低価格かつ効率的に解析することができた(Plant Biotech., 2019)。得られた結果からは、今後、ゲノムワイドなDNAメチル化の解析により、新しい知見が得られると期待される。さらに、AS2の核小体周辺部での局在は、rDNAの遺伝子抑制の場と一部重なっており、AS2がこの領域で遺伝子の不活性化に関わるというモデルと矛盾しない結果であった(Plant Journal., 2020掲載、3月号の表紙にも採用された)。したがって、研究は順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果と合わせて、現在私たちは、AS2と核小体因子は、核小体周縁部でエピジェネティックな遺伝子の発現抑制に関わる、というモデルを提案している。 前年度の解析で、as2変異アリル、核小体因子の変異体がETT遺伝子領域のDNAメチル化を正に制御することが明らかになった。また、ETT以外の遺伝子領域にも影響を与えるという予備的な結果も得た。 そこで、今年度は、AS2や核小体因子RH10がゲノムワイドなDNAメチル化に与える影響について、次世代シーケンサーで解析を行う。この際、従来のバイサルファイト法ではなく、酵素的にメチル化されていないシトシンを変換する方法を用いて解析する。従来法よりDNAに与えるダメージが少なく、より多くの情報が得られると期待される。RH10は、動物にも相同タンパク質が存在することから、その標的が普遍的な遺伝子の可能性もある。 次に、核小体因子RH10の変異がAS2の局在と核小体の周縁部の構造に与える影響について検討し、核小体の構造と遺伝子抑制との関わりを明らかにしたい。 また、このモデルでは、実際にETT領域が、AS2により核小体周縁部にリクルートされるかを検証する必要がある。そこで、昨年度に引き続き、ETT遺伝子座を視覚化するコンストラクトを作製する。
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Causes of Carryover |
理由:新型コロナウイルスの感染拡大による影響により、参加予定の学会年会が延期となり、その旅費を繰り越した。また、購入予定であったDNAメチル化解析の試薬が世界的に在庫のない状態となり、購入できなくなり、その後の解析費用も繰越す結果となった。 使用計画:今年度酵素的に変換したDNAを用いた、DNAメチル化解析法に関して、条件を検討するための試薬、コンピューター解析プログラムの開発解析の費用に使用する。その結果をもとに、ゲノムワイドなメチル化の解析を行う予定である。
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Research Products
(15 results)