2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on mechanism suppressing starch biosynthesis by plastidial folate
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19K06731
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
林 誠 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (50212155)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プラスチド / 葉緑体 / エチオプラスト / アミロプラスト / デンプン |
Outline of Annual Research Achievements |
デンプンはアミロプラストや葉緑体に蓄積する。一方、同じプラスチドに属するエチオプラストや光合成を行っていない葉緑体などはデンプンを蓄積しない。申請者は、エチオプラストや光合成を行っていない葉緑体にデンプンを蓄積する変異体の単離に成功した。変異体の解析から、デンプン非蓄積型プラスチドは、葉酸によってデンプン合成が抑制されていることを明らかにした。さらに、メトトレキサートのような葉酸合成阻害剤や5フルオロウラシルなどの葉酸代謝拮抗剤がデンプン非蓄積型プラスチドのデンプン合成を誘導することにも明らかにしている。本研究の目的は、これらのタンパク質およびその遺伝子の網羅的な同定とその機能解析を通して、葉酸によるデンプン蓄積抑制の機構を分子レベルで明らかにすることにある。 初年度には5フルオロウラシル存在下でもエチオプラストにデンプンが蓄積しない5フルオロウラシル耐性変異体のスクリーニングを行い、20系統の候補株を得た。本年度は、これら変異体の遺伝学的解析を進めた。その結果、これらのうちの7系統は同一の原因遺伝子に変異を持つことが明らかになり、原因遺伝子の特定に成功した。この遺伝子産物はアデニンの合成に関与すると予想される。この結果は、初年度明らかにしたアデニンの投与がエチオプラストのデンプン合成が促進するという結果とよく一致している。残りの変異体についても遺伝学的解析を進めており、うち1系統についてはおおよその原因遺伝子座の位置を特定するところまでに至っている。 平行してエチオプラストのデンプン蓄積を誘導する新奇化合物のスクリーニングも開始し、有望化合物を得てD8と名付けた。現在、D8耐性変異体のスクリーニングを行っている。すでに、いくつかのD8耐性変異体も得ることに成功している。また、アデニン耐性変異体のスクリーニングも開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エチオプラストにデンプン蓄積を誘導する化合物のスクリーニングを行い、当初予定していた5フルオロウラシル、アデニンに加えて、新奇化合物D8を同定することに成功した。また、5フルオロウラシル耐性変異体の解析ではすでに1つの原因遺伝子を特定しており、変異体の詳細な表現型解析を行えば論文発表ができる状態にある。他にも複数の5フルオロウラシル耐性候補変異体があり、順次原因遺伝子を特定している。また、エチオプラストのデンプン蓄積を誘導する新奇化合物のスクリーニングを終え、D8を同定した。さらに、D8存在下でもエチオプラストにデンプンを蓄積しないD8耐性変異体候補株やアデニン耐性変異体の単離にも成功している。これらの変異体はまだ原因遺伝子の特定には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
原因遺伝子が特定できた5フルオロウラシル耐性変異体はデンプン定量、アデニン定量、プラスチドの形態観察、メトトレキサートやアデニン、D8による影響など詳細な表現型解析を行った上で論文発表を行う。その他の変異体については遺伝的解析はほぼ終了しており、来年度に向けて原因遺伝子の同定を開始する予定である。原因遺伝子が特定できたらシロイヌナズナゲノムデータベースなどを用いて遺伝子の機能を予測する。機能が未同定である場合には、類似性検索やドメイン検索 などを行い、機能を推定する。 これらの解析を合わせることで、エチオプラストのデンプン蓄積メカニズムを多面的に考察することが可能になると考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は主に変異体のスクリーニングと変異体の原因遺伝子特定のために全ゲノムシークエンスやクローニングなどに必要な経費を確保していた。スクリーニングは人手が必要で経費を人件費に当てたため、多くの変異体を同定することができた。一方で、原因遺伝子の特定を始めることのできた変異体は1系統に留まったので、確保していた経費の一部が残る結果となった。多数の変異体候補が原因遺伝子の特定を始められる段階に近づいているので、次年度使用額はできる限り多くの原因遺伝子を特定するための経費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)