2020 Fiscal Year Research-status Report
胴部と尾部の境界を創り出す新規の形態形成機構の細胞・分子・力学基盤及び進化の研究
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19K06735
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中本 章貴 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (40738100)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 形態形成 / MAPK |
Outline of Annual Research Achievements |
胴部と尾部の境界のくびれは、表皮細胞が明瞭な境界を持って異なった方向に分裂することで形成されることが示唆されている。しかしながら、薬理学的に表皮細胞の分裂方向を撹乱した胚では、くびれは著しく減少するものの、完全には無くならなかったことから分裂方向の制御以外のメカニズムが存在する可能性が考えられた。 様々な動物胚の形態形成においてMAPKが関与していることから、リン酸化MAPKに対する抗体を用いて神経胚期(くびれ形成前)から初期尾芽胚期(くびれ形成後)にかけて、MAPKの活性化パターンを詳細に観察した。また、MEK阻害剤U0126を用いて神経胚期のMAPKの活性化を抑制した胚では、くびれの形成が異常になることが明らかとなった。この結果は神経胚期におけるMAPKの活性化がくびれの形成に関与していることを示唆している。 正常発生では、表皮のくびれの位置は裏打ちする間充織と筋肉の境界とほぼ一致している。またMAPKの活性化の有無によって筋肉と間充織の運命決定が行われることから、MEK阻害剤処理胚では筋肉と間充織の運命決定が乱され、筋肉と間充織の境界が異常になった結果、表皮のくびれ形成が異常になった可能性が考えられた。そこでMEK阻害剤処理胚において筋肉の分化マーカーである筋肉アクチンの遺伝子の発現を観察した。その結果、筋肉アクチンの遺伝子は尾部に限定して発現しており、異所的な発現は見られなかった。これらの結果は、神経胚期におけるMAPKの活性化はくびれ形成に必要であるが、筋肉と間充織の運命決定には影響を与えていないことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
くびれ形成の仕組みをマボヤとヨーロッパザラボヤで比較する計画であったが、コロナ禍の影響でヨーロッパザラボヤの採集や入手が困難であったため。
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Strategy for Future Research Activity |
ヨーロッパザラボヤの提供元を増やし、ヨーロッパザラボヤでくびれ形成の仕組みを解析する。特に上皮の分裂方向や、細胞系譜とくびれの位置の関係、神経胚期におけるMAPKの活性化パターンとその機能に着目して解析する。
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Causes of Carryover |
2020年2月から3月にかけて異動のための準備や業務があり、当初の予定であった 実験を行うことが出来なかったため。翌年度分として請求した助成金と合わせて、異動先での 本研究の遂行のための実験に使用する計画である。
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