2020 Fiscal Year Research-status Report
Comparative analyses on the diversity of hepatic architectures of vertebrates and their molecular mechanisms
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19K06737
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
塩尻 信義 静岡大学, 理学部, 教授 (70162568)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 形態進化 / 平滑筋アクチン / 肝臓構築 / 肝内胆管 / zonation |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物の肝臓構築には、肝内胆管の走行が門脈に沿う”並走型”と、門脈とは独立の”独立型”がある。無顎類で並走型が出現、これは四足類に続く一方、条鰭類の進化では並走型から独立型に移行する。肝内胆管周囲のα-平滑筋アクチン(Acta2)の発現がこの形態進化に関係するという予備データを先に得ていたが、脊椎動物各種でその発現を免疫組織学的に検証したところ、胆管走行と平滑筋の発達は必ずしもカップルすることはなかった。そのため、Acta2遺伝子上流域の比較ゲノム解析と遺伝子欠失実験については行わないこととした。さらに脊椎動物の肝臓構築について解析を進め、アセチル化チューブリン免疫染色により肝内胆管上皮における繊毛の有無を探索したところ、Acta2タンパク質が胆管周囲に発達しないカライワシ類以降で繊毛が発達しないことが明らかとなった。これは透過型電子顕微鏡でも確認された。これらの結果はカライワシ類以降で胆汁輸送の仕組みが変化したことを示唆している。 脊椎動物の肝臓構築を分子レベルで説明するため、マウスで知られる肝臓構成細胞の分子マーカー(門脈内皮, Jag1, コネキシン37・40等; 類洞内皮, Stab2, Lyve1; 星細胞, p75/neurotrophin受容体)や肝内の遺伝子発現が帯状になるzonationマーカー(尿素回路酵素や接着分子等)について、マウスとゼブラフィッシュ肝臓間で比較発現解析を行った。ゼブラフィッシュの場合、第3次ゲノム重複のため各オルソログが重複して存在する場合があるが、少なくとも通常の飼育状態では、マウスでzonationが認められ分子マーカにーについて帯状分布が認められものはなかった。この結果は哺乳類と真骨類で肝臓の構築の、分子レベルでの仕組みが大きく異なることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、Acta2タンパク質の分布と肝内胆管配向が必ずしもカップルしていないというデータを受け、比較ゲノム解析等を行わないこととして、研究の方向性を調整した。脊椎動物における肝内胆管と門脈の配向と連動する形質の探索と、zonationに関するマウスとゼブラフィッシュ間での比較解析を行い、新たなカップルマーカーとゼブラフィッシュ肝臓が哺乳類と異なる構築をしている可能性を示唆した。次年度はこれらの成果に基づいてさらに研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
脊椎動物の肝臓構築の分子メカニズムを探る上で、分子マーカーの発現解析は欠かせないが、抗体を用いた分子レベルでの解析は限られるので、in situ hybridizationによる遺伝子発現解析を進めている。その最適化について効率よく進めるため、他研究者から情報を得つつ機動的に研究を進めて行きたい。また形態進化やゲノム進化の専門家と議論を行いながら、独創的な研究を発展させていく必要がある。
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