2021 Fiscal Year Research-status Report
Comparative analyses on the diversity of hepatic architectures of vertebrates and their molecular mechanisms
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19K06737
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
塩尻 信義 静岡大学, その他部局等, 理事 (70162568)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 形態進化 / 肝臓構築 / 肝内胆管 / ゾネーション / 繊毛 / 神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物の肝臓構築には、肝内胆管の走行が門脈に沿う”並走型”と、門脈とは独立に肝内に分布する”独立型”がある。無顎類で並走型が出現、これは四足類に続く一方、条鰭類の進化では並走型から独立型に移行する。脊椎動物の肝臓構築についてさらに解析を進め、アセチル化チューブリン免疫染色を行い、繊毛の分布に加え、肝臓内での神経の分布状況を解析した。その結果、無顎類ヌタウナギでは肝内の神経発達は十分ではないが、それ以外の脊椎動物では、神経は肝内の胆管、動脈、門脈に分布していた。これにより真骨類肝臓では門脈と中心静脈の判別が組織学的に困難であったが、神経分布をマーカーとして判別が可能となった。また脊椎動物肝臓において神経分布がよく保存されていること、そして無顎類の肝臓は祖先的形質を有することが明らかとなった。さらに、脊椎動物の肝臓構築を分子レベルで説明するため、マウスで知られる肝臓構成細胞の分子マーカー(門脈内皮, Jag1, コネキシン37・40等; 類洞内皮, Stab2, Lyve1; 星細胞, p75/neurotrophin受容体)や肝内の遺伝子発現が帯状になるzonationマーカー(尿素回路酵素や接着分子等)について、前年度に引き続き、マウスとゼブラフィッシュ肝臓間でin situ hybridization法を用いて比較発現解析を行った。ゼブラフィッシュの場合、第3次ゲノム重複のため各オルソログが重複して存在する場合があるが、マウスでzonationが認められる分子マーカーについて帯状分布が認められものはなかった。これらの結果は、哺乳類と真骨類で肝臓の構築の、分子レベルでの仕組みが大きく異なることを示した前年度の結論を支持するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
他の業務量が増加し、十分に研究を遂行することができなかった。合わせてコロナ禍のため、研究協力者の学生を含め、研究を機動的に進めることができなかった。 今年度は、脊椎動物における肝臓構築を解析し、神経分布が系統進化的によく保存されていること、そして神経分布をみることにより、真骨類において門脈と中心静脈を区別できることが明らかとなった。前年度に引き続き、zonationに関するマウスとゼブラフィッシュ間での比較解析を行い、ゼブラフィッシュ肝臓が哺乳類と異なる構築をしている可能性を示唆した。次年度はこれらの成果に基づいてさらに研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
脊椎動物の肝臓構築の分子メカニズムを探る上で、分子マーカーの発現解析は欠かせないが、抗体を用いた分子レベルでの解析は限られるので、in situ hybridizationによる遺伝子発現解析を進めている。その最適化について効率よく進めるため、他研究者から情報を得つつ機動的に研究を進めていきたい。本研究では、無顎類ヌタウナギの肝臓構築が形態的に祖先的であるデータを蓄積しつつあるが、今後はその遺伝子発現を解析し、祖先的な肝臓の起源を証明していく必要がある。また条鰭類の進化において胆管分布が変わる仕組み解明に向け、門脈配向の進化を含めさらなる形質の解析が必要である。
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Causes of Carryover |
他の業務の増加とコロナ禍により研究を機動的に進めることができず、補助事業期間延長申請を行ったため。令和4年度に残っている研究を実施するが、次年度使用額についてはその実施に必要な消耗品、旅費等に使用予定である。
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