2021 Fiscal Year Research-status Report
WHERE DID GAMETE DUCTS OF TELEOSTS COME FROM?
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19K06738
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金森 章 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (40324389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 政人 京都大学, 農学研究科, 准教授 (60263125)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 輸卵管 / 輸精管 / ミュラー管 / ウォルフ管 / wnt4 / ゲノム編集 / ヤツメウナギ / 軟骨魚類 |
Outline of Annual Research Achievements |
真骨魚に起こった体の作りの変化として最も顕著なものの一つに、配偶子輸送管(輸精管と輸卵管)がまったく新しく作り直されているように見えることがある。真骨魚以外のほとんどの脊椎動物では輸卵管はミュラー管、輸精管はウォルフ管という、生殖巣の外に形成された管由来だが、真骨魚では両者ともに生殖巣内部に新しく管を形成している。配偶子を体外に出さねば、受精できず子孫は途絶え絶滅するのみである。真骨魚はどのようにして、このドラスティックな形態形成の変化 を進化させることが出来たのだろう?それともドラスティックに見えて、よく調べればミュラー管やウォルフ管の変形にすぎないのだろうか?本研究はこの2つの仮説のどちらが正しいのかを問う。 ミュラー管形成に必須な遺伝子は、マウスで多数同定されている。昨年度はそのひとつ、間充織から分泌されミュラー管の陥入と伸長を誘導するwnt4に着目 し、メダカで2つのwnt4ホモログ,wnt4aとwnt4bノックアウト変異体(KO)の表現型を観察した。その結果、wnt4a KOではオスメス共に正常な外部形態を持つ成魚に発生したが、生殖巣後半につながる伸長部が体腔内に留まり、WTでは膀胱の腹側で伸長する配偶子輸送管(メスの輸卵管とオスの輸精管)が全く形成されな かった。本年度はwnt4a KOの別のKOallele、およびwnt4a発現部位特定のためwnt4a-GFP fusion alleleの作成が完了し、新たな表現型の記載ができた。 アミノ酸配列の系統解析より、真骨魚のwnt4aが哺乳類wnt4のorthologであり、ortholog KO表現型の類似性はマウスでのミュラー管形成と真骨魚でのオスメス の配偶子輸送管形成が相同な現象であることを強く示唆する。 さらに本年度はヤツメウナギwnt4cDNAの同定ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスでミュラー管形成に必須な遺伝子のwnt4のメダカホモログを破壊した表現型から、真骨魚でのオスメスの配偶子輸送管形成がミュラー管形成と相同な現象であることが強く示唆された。これにより今後の研究方針が定まった。この方針に沿ってwnt4a KOの別のKOallele、およびwnt4a発現部位特定のためwnt4a-GFP fusion alleleの作成およびヤツメウナギwnt4cDNAの同定はできたが、ヤツメウナギ生体の入手に苦労し、ヤツメウナギでの配偶子輸送孔発生の研究が進展しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記相同性を確かめるためには、i)メダカでのwnt4aの発現領域と配偶子輸送管の誘引・伸長の細胞分子機構を調べ、ミュラー管形成と比較すること、ii) lhx1、pax2、emx2などのマウスでミュラー管形成に必須な遺伝子を、真骨魚でKOし配偶子輸送管形成不全を確かめること、iii)無顎類と真骨魚類基部で分岐した ウナギ(メス)(どちらも配偶子を体腔に放出し、体腔と体外を結ぶ短い輸送孔のみを持つ)で、輸送孔形成にwnt4の果たす役割を調べること、が必要だと考え る。 本年度は特にi)でのwnt4a-GFP fusion alleleによるwnt4a発現部位特定、iii)のヤツメウナギでの輸送孔形成 とwnt4発現の関連、さらに軟骨魚類でのミュラー管、ウォルフ管の発生観察に重きをおく。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金の支出を計画していたが、現状の人員で間に合ったため支出がなくなった。昨年度はこの余剰分を特にヤツメウナギの採集旅費および飼育装置の購入に充てる予定だったが、covid-19の蔓延により採集ができなくなった。本年度も採集は難しいので、業者からの購入費用が必要である。また今年度は生体材料の維持に人件費が必要である。
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