2019 Fiscal Year Research-status Report
アンドロゲン受容体の機能分化からみる多様な雄性形質発現の基本原理
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19K06741
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
荻野 由紀子 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00404343)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 二次性徴 / アンドロゲン / メダカ / 遺伝子重複 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、真骨魚類をモデルとし、アンドロゲン受容体(AR)遺伝子のゲノム重複に伴う重複・新機能獲得と、形態・神経機能における二次性徴形質の多様化との関連性の解明を進めるものである。本年度は、ARα、ARβ変異体及び、ARα/ARβ二重変異体を用い、ARの性ホルモン産生、視床下部下垂体生殖腺系に果たす役割の解明、ARパラログ特異的標的遺伝子の探索を進めた。 ARα、ARβいずれの変異体も自然交配による受精率が低い。ARα/ARβ二重変異体は性行動を全くとらず放精に至ることはない。しかし、ARα、ARβいずれの変異体及び二重変異体においても精子運動能に異常を示さず、人工授精率も野生型と大きな違いはなかった。ARα/ARβ二重変異体では精子数が野生型個体よりも多い傾向を示した。さらにこれらの変異体について、視床下部の性腺刺激ホルモンLhβ, Fshβの発現を比較した結果、Lhβ, Fshβの発現がいずれもARα/ARβ二重変異体では増加していた。またLC/MSを用いたアンドロゲン測定の結果、ARα/ARβ二重変異体では 11-ketotestosterone (11KT)の産生が亢進していることが明らかとなった。従って、11KT/ARシグナルが作用しなくなることで、Lhβ, Fshβに対するネガティブフィードバックが効かなくなり、精巣機能が亢進したと予想されるなど、ARシグナルの生殖機能に対する詳細が明らかとなってきた。 また、合成アンドロゲン投与によりメスに外部二次性徴発現を誘導した際に初期変動する遺伝子群の詳細が明らかとなってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ARα、ARβ変異体及び、ARα/ARβ二重変異体を用い、ARの視床下部下垂体生殖腺系に果たす役割が明らかとなってきた。ARα/ARβ二重変異体の雄性性行動の欠損は、アンドロゲン産生や精巣機能の低下に起因するものではなく、ARα/ARβ二重変異体では性行動を賦活する神経回路に異常があると考えられるなど、ARシグナルの神経基盤に果たす役割を解明する上で重要な基礎データを得ることができた。また、ARパラログ特異的標的遺伝子の探索について、ARβを中心に順調に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
優位オスでのARαの発現上昇に伴うニューロンの増殖をBrdU投与実験にて解析し、ARαとの局在の比較から、ARα標的ニューロンを同定する。AR発現細胞をmClover3の発現で可視化し、細胞内局在をFLAGの発現から調べることができるAR-2xFLAGmCloverノックインメダカを用い、AR発現細胞とBrdU陽性細胞の二重染色により、ARα依存的なニューロン新生の有無を明らかにする。さらにFLAG抗体を用いて核への移行が見られるかなど、細胞内局在の詳細についても解析する。 WTおよびARα変異体オスの脳における遺伝子発現の相違からARα標的遺伝子の網羅的なスクリーニングを進めるとともに、オープンクロマチン領域をATAC-seqを用いて解析する。また、昨年度から進めているARβ特異的標的遺伝子の探索を引き続き行い、AR変異体での遺伝子発現やレポーターアッセイにより標的遺伝子を同定する。
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Causes of Carryover |
実験に必要なノックインメダカの遺伝型の判定を3月に予定していたが、個体群の成長が十分でなく、4月に行うことに変更したため、シーケンス費用などが繰越し金として生じた。この経費は遺伝型の判定に使用し、判定した個体を本年度の研究計画に使用する。
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Research Products
(3 results)