2020 Fiscal Year Research-status Report
肝臓で作られる魚類の強固な卵膜~その形成機構の解明~
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19K06744
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
佐野 香織 城西大学, 理学部, 助教 (70612092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神田 真司 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50634284)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 魚類卵膜 / 発現場所の変化 / 組換えタンパク質作製 / zp遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
魚類の卵膜は元来卵細胞が合成していたが、その進化過程で合成場所が肝臓へと移行した。このようなダイナミックな変化を遂げるには、発現場所の変化、肝臓から卵巣への輸送の仕組み、他器官から運ばれてきたタンパク質で卵膜を形成など、多くの変化を伴うことが予想される。これを実証するためにはまだ解明されていない、魚類の卵膜形成メカニズムを理解する必要がある。本研究は、魚類の進化において卵膜の合成場所が変化した要因を探るため、卵膜タンパク質(ZP: zona pellucida, Chg: choriogenin)を卵巣で合成するゼブラフィッシュと肝臓で合成するメダカを研究材料として、トランスジェニック生物および卵膜タンパク質を用いた解析によってこれらの卵膜形成メカ ニズムとその違いを明らかにすることを目指している これまでに、HEK(human embryonic kidney )293A細胞の発現系を用いて、糖タンパク質である卵膜タンパク質(ゼブラフィッシュ:rZP2, rZP3, メダカ: rChgH, rChgL)の作製に成功している。これらを生体に投与し、本来卵巣でZPタンパク質を合成するゼブラフィッシュにおいて卵膜となったら、上記の「多くの変化」のうち、遺伝子のツ発現場所の変化のみによって、魚類は肝臓で卵膜を合成するシステムを確立したことが示唆されると考えている。 また、卵膜形成の分子メカニズムを解明するため、作製した組換えZPタンパク質を単離培養した卵細胞と共存させ、卵膜の形成過程をコンフォーカル顕微鏡を用いて観察することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、HEK(human embryonic kidney )293A細胞の発現系を用いてゼブラフィッシュ及びメダカの卵膜タンパク質(ゼブラフィッシュ:rZP2, rZP3, メダカ: rChgH, rChgL)の作製に成功していた。 本年度は、作製した組換えタンパク質を生体に投与して解析した。もともと肝臓でChgタンパク質を合成するメダカに投与したrChgH, rChgLは、メダカの血清中および卵膜から検出された。このことから、肝臓で合成されて血流を介して卵巣に運ばれて卵膜を形成するメダカのシステムを、rChgで再現できたと考えている。一方、本来卵巣でZPタンパク質を合成するゼブラフィッシュにrZP2, rZP3を投与した結果、こちらも血清中および卵膜から検出された。このことから、他器官で合成されて血流によって運ばれてきたタンパク質で卵膜を形成機能は、それらを利用していないゼブラフィッシュのような種にも存在する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度にマイクロインジェクション法によって肝臓でZP遺伝子を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュ(Tg: ZP2 expressed in liver)の樹立を始めた。現在トランスジェニック体が出来上がりつつあるので、来年度はその解析を行う。自発的に肝臓でZPタンパク質を合成するゼブラフィッシュにおいて、それらが卵膜になるか否かなどを解析予定である。 また、HEK293A細胞を用いて、蛍光タンパク質(mClover3, mRuby)融合ZP(またはChg)リコンビナントタンパク質を作製する。それらを、単離した卵細胞と共存させ、培養卵細胞に対して卵膜を形成するかを調べる。卵膜を形成する場合は、コンフォーカル顕微鏡を用いて(分担者・神田との共同研究)、2種類の蛍光タンパク質によるFRETの原理を利用して、卵膜の形成過程をリアルタイムで観察することを目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で年度の前半は研究室が稼働できなかったため、消耗品等の消費が例年と比べて極端に少なかった。
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Research Products
(2 results)