2021 Fiscal Year Research-status Report
マダラシミ(昆虫綱・シミ目)の胚発生過程の記載―腹板における亜基節由来説の検証―
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19K06745
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
増本 三香 北里大学, 一般教育部, 講師 (60458742)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マダラシミ / 胚発生 / DAPI / エチジウムホモダイマー |
Outline of Annual Research Achievements |
マダラシミの胚発生の概略をつかむために、各ステージの胚をパラフォルムアルデヒド溶液で固定し、蛍光核染色を試みた。前年度にPropidium Iodide (PI)染色を試みたが、うまく染色できなかったため、別の染色方法を試みた。他昆虫種を用いた研究で一般的に使用されるDAPI染色である。この染色法により、各ステージの胚を、観察し概略をつかむことができた。今後は、特に腹方上皮(腹板)の形成過程について詳細に観察をするために、電子顕微鏡(SEMやTEM)を用いた観察を行い、外部形態の記録をする予定である。 初期卵(胚盤が形成される前)については、UV励起にて観察した場合に卵殻の自家蛍光が邪魔をするため、核の観察ができなかった。そのため、DAPIとは異なる波長で励起されるエチジウムホモダイマーを用いた核染色法を試みているところである。しかし、初期卵は卵殻が薄く、染色の過程で卵殻が破れて中の卵黄が大量に流出してしまうことが多い。今後は、染色前に卵殻に複数の小さい穴をあけるなどの工夫をする必要がある。 孵化後の若齢幼虫(1齢~3齢)については、光学顕微鏡を用いた観察・記録を行った。今後は、詳細な観察が必要な箇所について、金属蒸着を施さないナノスーツ法(脱水の過程がないため、体表のクチクラが収縮するなどのアーティファクトを抑えることができる)によりSEM観察を行う予定である。 以上の結果をもって、マダラシミの胚発生を記載する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に、研究室が所持している実体顕微鏡の関係で試した染色液の条件決めに時間を要したため遅れている。また、感染症対策のため所属機関における国内出張が制限されており、他県にある研究機関の実験機器を使用することができない期間があったため、当初の予定よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、DAPI染色にて観察した胚発生過程の概略に加え、初期卵や若齢幼虫の観察結果をまとめて記載する予定である。その中で、特に腹方上皮(腹板)が形成される時期を絞り込み、該当するステージの胚を用いて透過型電子顕微鏡下で観察を行い、腹方上皮の形成過程を詳細に記載する。 初期卵の染色については、卵が壊れないようにするための工夫が必要だが、染色前に卵殻に細いタングステン針で複数の穴を開けるなどの初歩的な対策をとることで解決できると考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は主に胚の蛍光染色を行うなどのデータを出すことに専念しており、電子顕微鏡用の試料を作成するための試薬や道具を購入しなかったことと、出張費や論文投稿費などがなかったため、次年度使用額が生じた。
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