2023 Fiscal Year Research-status Report
マダラシミ(昆虫綱・シミ目)の胚発生過程の記載―腹板における亜基節由来説の検証―
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19K06745
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
増本 三香 北里大学, 一般教育部, 講師 (60458742)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マダラシミ / 形態形成 / 胚発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、マダラシミの胚発生過程を詳細に調査することにあり、特に腹板の形成過程に焦点を当てて、これまでの研究成果を再検討することを目指している。マダラシミは昆虫の中で系統学的に重要な位置にいるため、その胚発生の詳細な解析は昆虫発生学の理解を深めるうえで重要である。本研究では、胚発生の各段階における胚をパラフォルムアルデヒド溶液で固定し、核の染色には蛍光染料であるDAPIを用いて明瞭な画像を取得した。これにより、胚発生の全体像を概略を把握することが可能となった。 この研究の初期段階では、特に中腸上皮の形成過程を詳細に観察し、中腸上皮が卵黄細胞に由来することを明らかにした。この発見は昆虫の胚発生過程における重要な機構を示しており、結果は論文として公表した。これにより、他の昆虫群との比較研究が進み、昆虫の進化における中腸形成の多様性に関する議論が活発化した。 腹板の形成過程に関しては、さらに詳細な観察を目的として、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察を行った。この際、金属蒸着を避けるナノスーツ法を採用し、生物試料の自然な状態を保ちながら、順調に観察を行っている。 今後の研究計画としては、腹板形成に関する更なる詳細を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察を行う予定である。TEMによる観察は、細胞内部の超微細構造まで解明できるため、腹板形成に関わる細胞の動態やその機能的側面をより詳しく探ることが期待される。 これらの研究成果は、マダラシミの胚発生に関する新たな知見を提供するだけでなく、昆虫の発生生物学全体の理解を促進することに寄与すると考えられる。さらに、得られた知識は他の昆虫種との比較研究へとつながり、遺伝子操作による発生過程の制御や害虫管理のための新しい戦略の開発、生態学的な研究への応用など、広範な分野に影響を与える可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究活動においての困難はないが、学内業務のため研究時間が予想以上に取れなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、腹板の形成過程について、電子顕微鏡(特に透過型電子顕微鏡)を用いた観察を中心に行う予定である。それと並行して、胚発生過程の概略について、論文として公表する準備を行う。
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Causes of Carryover |
研究時間が予想以上に取れず、研究の進行に伴って必要となる消耗品などの購入ができなかったため。
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