2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation for regulatory mechanisms of cnidarian muscle contraction
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19K06755
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 啓之 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (90241372)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 刺胞動物 / 筋肉 / 筋収縮調節 / カルシウムイオン |
Outline of Annual Research Achievements |
ミズクラゲ横紋筋から精製したミオシンの画分に少量含まれていることが確認された新規カルシウムイオン結合タンパク質、AaCBPを認識する抗体を精製した。また、ミズクラゲ横紋筋アクトミオシンの構成成分であるものの、機能が不明なパラミオシン様タンパク質について、C末端断片を大腸菌発現させ、ウサギに免疫して抗血清を作製した。これらの抗体を用いて、ウェスタンブロッティングや免疫染色を行い、これらのタンパク質の発現解析を行った。また、ミズクラゲのポリプや成体の下傘、上傘、口腕など各種の組織・部位からのRT-PCRによる発現解析も行った。それらの結果、これらのタンパク質はいずれも横紋筋を含む組織に特異的に発現しており、横紋筋に特有の形態形成、収縮や収縮の調節等に関与している可能性が示された。特に、AaCBPに関しては、サルコメア構造の中でもミオシンフィラメントの部位に存在することが明らかとなった。また、横紋筋から抽出・精製した天然アクトミオシンには、AaCBPが結合していること、そしてそれは、天然アクトミオシンにキモトリプシンを作用させてミオシンの重鎖が切断されると遊離することも示された。以上の結果から、AaCBPはミオシンに結合して機能するタンパク質であると考えられ、筋細胞への刺激伝達時に細胞内で濃度が上昇するカルシウムイオンを結合して、情報をミオシンに伝達し、アクチン-ミオシン相互作用を促進して筋収縮を引き起こすという、筋収縮調節機構の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規カルシウムイオン結合タンパク質AaCBPの局在部位についての情報が得られ、AaCBPが、ミオシンまたはミオシン結合タンパク質と相互作用する成分であることが示唆された。従って、AaCBPが細胞内カルシウムイオン濃度上昇の情報をミオシンに伝達し、アクチン-ミオシン相互作用を促進する筋収縮調節機構の存在が推測でき、一定の成果があったと考えられる。一方、各種の筋肉タンパク質を単離精製する際の出発材料となる大型のミズクラゲが入手できず、ミオシンとAaCBPの相互作用を試験管内で解析するなどの実験は行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
大型のミズクラゲ個体を入手できなくても、飼育下の小型個体で実施できる研究手法として、 (1)酵母Two-Hybrid systemや免疫沈降法により、AaCBPまたは他のアクトミオシン構成タンパク質と相互作用するタンパク質の探索を行い、筋肉タンパク質間の相互作用ネットワークの解析を進め、筋収縮調節機構の解明につなげる。 (2)役割の不明な筋肉タンパク質について、RNA干渉による遺伝子ノックダウンや、ゲノム編集による遺伝子ノックアウトを行い、横紋筋の形態形成や、個体の運動能力に及ぼす影響を調べ、それらのタンパク質の役割を類推する。 等が可能であり、実施を予定している。
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Causes of Carryover |
次年度の交付金額が100,000と少ないため、研究活動の維持を目的として、意図的に次年度使用額を発生させた。
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