2020 Fiscal Year Research-status Report
ミツバチのナビゲーションにおける方向と距離の情報統合の脳内メカニズム
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19K06765
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡田 龍一 神戸大学, 理学研究科, 学術研究員 (20423006)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナビゲーション / 脳 / 情報統合 / バーチャルリアリティ / 中心複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
巣や餌場などの目的地へ移動する「ナビゲーション行動」では、移動中に方向情報と距離情報を逐次取得しそれらを統合して移動を完遂するが、脳内での統合の仕組みについてはほとんどわかっていない。そこで、本研究では採餌経験をさせたミツバチをバーチャルリアリティ空間内で疑似的に採餌のナビゲーション飛行をさせ、その時の脳内のナビゲーション中枢の神経活動を記録し、どのように方向情報と距離情報が脳内で統合されるかを明らかにすることを目的としている。今年度は脳の抑制性神経回路の知見を得るために、GABA受容体の脳内分布の研究を進めた。昆虫のナビゲーションにおける方向に関する情報処理中枢と目されている中心複合体は、GABA陽性シグナルが顕著に検出されるため、脳内のGABA受容体の分布の解明はナビゲーションに関する脳神経回路の解明に大きく近づく。イオン型と代謝型の2タイプのGABA受容体について、GABA遺伝子内のさまざまな部位のペプチド配列をターゲットにした複数の抗体を用いて、3種類の固定液を使って抗体染色をした。その結果、ある配列に対する抗体で繰り返し良好な結果が得られた。抗体染色の結果では、GABA受容体を持つニューロンは太いトラクトを形成することなく、脳内に散在していた。とくに中心複合体の前大脳橋の後ろ側に数個の細胞体が染まった。前大脳橋は、偏光応答ニューロンに関して応答するeベクトル方向ごとのカラム構造を形成しているため、これらのニューロンは方向情報の処理に重要な役割を担っている可能性がある。現在は、この組織学的研究を続けながら、平行して電気生理実験を準備している。 また、本研究に学術的基盤を与える行動研究に関する論文を国際誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、組織化学的研究を行って、方向の情報処理において注目すべき脳部位をみつけた。これらの結果は、電気生理実験を促進させると期待される。フライトシミュレータでのバーチャル刺激は実装段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
脳内のターゲットにすべき部位が明らかになったので、そこに着目して神経活動の記録を行う。さらに、実験個体の内部状態をできるだけ「採餌中」モードに保つために、トンネル実験から電気生理実験までの一連の流れを滞りなく円滑にするために、よりよい実験環境へ改良を重ねる予定である。それらと平行しながら、より精度高くターゲット部位を決定するために解剖学的研究も進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイスル感染拡大防止のため、予定していた出張がキャンセルになったり、それによって計画していた実験が持ち越しになったため。繰り越し分は、次年度にそれらの計画を実施するために使用する。
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