2019 Fiscal Year Research-status Report
新たに発見した視床下部小タンパク質による熱産生低下機構の解明
Project/Area Number |
19K06768
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩越 栄子 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 研究員 (50311296)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分泌性小タンパク質 / 脂肪蓄積 / 褐色脂肪組織 / 熱産生能 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は鳥類のニワトリや哺乳類のげっ歯類において80アミノ酸残基からなる新規分泌性小タンパク質neurosecretory protein GL(NPGL)を見出し、その生理機能解析を進めている。哺乳類を用いた先行研究からNPGLが白色脂肪組織における脂肪蓄積を促すことを見出している。さらに、褐色脂肪組織での脂肪滴の増大、つまり白色化が生じることも見出しているため、褐色脂肪組織の機能低下を引き起こしている可能性がある。この褐色脂肪組織は熱産生に重要な役割を担っていることが知られており、褐色脂肪組織の機能低下は熱産生低下に結びついている可能性がある。本年度は、げっ歯類のラット及びマウスを用い、NPGLの脳室内慢性投与や前駆体遺伝子の過剰発現を行い、褐色脂肪組織に対する影響を解析した。その結果、褐色脂肪組織重量に顕著な影響は認められなかったものの、先行研究と同様に脂肪滴の肥大化、つまり褐色脂肪組織の白色化が生じていた。次に、脂質合成及び脂質酸化酵素の発現レベルの解析を行ったところ、脂肪合成に関わる酵素群のmRNA発現が亢進していた。また、タンパク質レベルのでの解析をウエスタンブロッティングにより解析したところ、脂肪酸合成酵素(FAS)のタンパク質発現量が上昇していた。一方、脂質酸化に関わるホルモン感受性リパーゼ(HSL)のリン酸化レベルの変化は認められなかった。さらに、熱産生に関わり、ミトコンドリアに局在する脱共役タンパク質(UCP1)の発現レベルがmRNAレベル及びタンパク質レベルの両方で低下していることを見出した。本研究の解析により、NPGLが褐色脂肪組織の脂肪合成を高めることで白色化し、そのことが原因で熱産生能の低下を導いている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NPGLの熱産生能への関与を明らかにするために、本年度は基礎的なデータを数多く得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
NPGL産生細胞が存在している視床下部から褐色脂肪組織への制御ルートを明らかにする目的で形態学的な解析を進める。さらに、現在、遺伝子改変動物を作製中であり、本動物を用い、低温環境下でのNPGL産生細胞の働きを解析していく予定でいる。
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Causes of Carryover |
本年度の研究が効率的に進み、予定していた解析に対する支出も減少したために次年度以降の使用額が生じた。次年度は遺伝子改変動物の飼育・繁殖のために当初予測しているよりも多くの費用が発生するため、それらの研究推進に有効に使いたい。
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Research Products
(3 results)