2020 Fiscal Year Research-status Report
新たに発見した視床下部小タンパク質による熱産生低下機構の解明
Project/Area Number |
19K06768
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩越 栄子 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 研究員 (50311296)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分泌性小タンパク質 / 脂肪蓄積 / 褐色脂肪組織 / 熱産生能 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は鳥類のニワトリや哺乳類のげっ歯類において80アミノ酸残基からなる新規分泌性小タンパク質neurosecretory protein GL(NPGL)を見出し、その生理機能解析を進めている。哺乳類を用いた先行研究からNPGLが白色脂肪組織における脂肪蓄積を促すことを見出している。さらに、褐色脂肪組織での白色化が生じることも見出しているため、褐色脂肪組織の機能低下を引き起こしている可能性がある。本研究では、褐色脂肪組織の機能低下を介した熱産生低下の可能性を検討することを目的としている。 昨年度の解析から、NPGLが褐色脂肪組織の脂肪合成を高めることで白色化し、そのことが原因で熱産生能の低下を導いている可能性が示唆された。本年度は新型コロナの影響による緊急事態宣言の発令などで、研究室での活動が制限されたため、予定していた動物実験の遂行が遅れてしまった。そのため、研究内容を一部変更し、マウスの脳内でのNPGL産生細胞の特性及び投射部位を解析することで、褐色脂肪組織への神経連絡を解析し、熱産生低下機構を解析するという方法を取った。具体的には、NPGLに対する抗体と古典的神経伝達物質のカテコールアミン、グルタミン酸、ガンマアミノ酪酸(GABA)などを検出するための合成酵素やトランスポーターなどのマーカータンパク質に対する抗体を用いて、免疫組織化学的解析を行った。まず、NPGL神経細胞の投射に関しては、視床下部領域内にのみ神経線維が認められたことから、視床下部内の神経細胞に作用して熱産生低下を引き起こすことが示唆された。次に、古典的神経伝達物質のマーカーを用いた解析の結果、NPGL産生細胞は抑制性伝達物質のGABAを産出している可能性が示された。このことから、何らかの視床下部神経細胞を抑制することで熱産生低下を引き起こしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の結果を受けた当初の研究計画では、動物をモニターしながらNPGLの熱産生低下機構を解析する予定であった。しかしながら、新型コロナの影響による研究制限が生じ、研究内容の変更が生じた。一方で上記の通り形態学的な解析は進んだため、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、遺伝子改変動物を作製し、繁殖中である。今後は本動物を用い、NPGL産生細胞を人為的に活性化した際の熱産生能に注目して解析をしていく予定でいる。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により研究遂行ができない期間があり、当初計画していた実験経費を使うことができなかった。そのために次年度使用額が生じた。次年度は遺伝子改変動物の飼育・繁殖のために採択当初予測しているよりも多くの費用が発生するため、それらの研究推進に有効に使いたい。
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Research Products
(5 results)