2019 Fiscal Year Research-status Report
Mode of transmission of visual infomation from the eye to the brain in the terrestrial slug
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19K06772
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
松尾 亮太 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (40334338)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳内光感知 / オプシン / 視神経 / ニューロペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ナメクジの眼の網膜に存在する視細胞が、網膜上の位置によって異なる神経伝達物質を用いていることを示し、さらにそれぞれの視細胞タイプが脳内のどの部位へと投射しているかを明らかにすることを目的としている。本研究を申請した2018年秋の時点では、網膜視細胞において4種類のニューロペプチドが神経伝達物質として使われていることを見出していたが、その後新たに3種類を見つけ、現在では7種類のニューロペプチド遺伝子について、それぞれの発現部位をmRNA(in situ hybridization)およびペプチド(免疫組織染色)のレベルでほぼ確定した。さらに、それぞれのニューロペプチドの視神経束内における分布を調べたところ、各視神経線維が、含んでいる神経伝達物質種によって局在性のある位置を占めていることも見出した。 また、オプシン分子を発現していることから脳内で光感知に関与すると予想されるニューロンが、眼から入力する視神経と相互作用していることが示唆されるデータも得ている。その結果、眼からの光入力と脳で感知した光情報が脳内の同じニューロン(群)に投稿されている可能性が出てきている。 また関連して、2019年度中には(1)ナメクジの眼の網膜視細胞が複数種類のオプシン分子(視物質)を共発現していること(Matsuo et al. 2019)、(2)ナメクジの脳内にオプシン分子が発現し、眼を用いなくても暗い場所へと逃げ込めること(Nishiyama et al. 2019)をそれぞれ投稿論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、網膜の視細胞によって異なる7種類のニューロペプチド遺伝子(MIP-1, MIP-2, FxRIamide, PP2, PP3, prohormone-4, enterin)を発現していることを明らかにした。それぞれに対する抗体に関しては、prohormone-4以外については作成することができた。prohormone-4に対するポリクローナル抗体は、現在作成の途中である。ただ、これら以外の神経伝達物質が使われている可能性についても現在検討を続けており、特にメインの視細胞(Type-I視細胞)で使われている神経伝達物質が依然として未同定の状態である。また、既に近縁種では報告があるものの、Type-I視細胞とType-II視細胞の形態について、本研究で用いているナメクジ種(Limax valentianus)についても電子顕微鏡で確認する作業も行っているところである。 一方、脳へ向けた視神経の投射経路に関しては、脳内でオプシンを発現するニューロンとの間でのシナプスレベルでの相互作用(電気シナプス等)が存在することを示唆する組織学的データを取得し始めている。無脊椎動物のギャップ結合は、哺乳類用に開発されたトレーサー分子とは異なる透過特性を持つため、トレーサー分子の使い分けが今後の課題となりそうである。また、脳内光感知機構との相互作用を知るために、細胞内記録用の電気生理学システムの立ち上げを始めている。小さなニューロンの細胞体からの細胞内記録についてはまだ再現性良く行うことができていないが、大きな細胞からは記録が可能になってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、(1)各抗体の特異性について、in situ hybridizationとのパターンの一致以外に、抗原ペプチドを用いた吸収実験などによっても示すこと、(2)視神経束内の分布様式について、さらに詳細に免疫組織化学的手法で解析すること、(3)上記7種類の他に、視細胞で発現するニューロペプチド遺伝子が無いか探索すること、(4)視細胞中で異なるニューロペプチド遺伝子が共発現していないかを二重蛍光in situ hybridizationで調べること、および(5)各ニューロペプチドを発現する視細胞がType-IであるのかType-IIであるのかについて、透過型電子顕微鏡を用いた解析を併用することで確定すること、の5点を行う。併せて、脳内で光感知に関与する神経回路の同定も進めて行き、さらにナメクジのオプシン分子で最も解析が遅れていたOpn5B遺伝子についても、眼および脳内における発現やその分子としての吸収波長特性について調べる。
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Causes of Carryover |
年度途中で民間財団の研究助成に採択され、その分、科研費からの物品費支出を抑えることができたため。2020年度は、種々の学会がコロナウィルス感染症対策の関係で中止になっており、旅費が抑制されるため、支出はもっぱら謝金と物品費がメインになるであろうと思われる。
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