2021 Fiscal Year Research-status Report
Postembryonic development of sex-pheromone processing pathway in a hemimetabolous insect
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19K06775
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
渡邉 英博 福岡大学, 理学部, 助教 (90535139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西野 浩史 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (80332477)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 性フェロモン / 嗅覚受容体 / 不完全変態昆虫 / 後胚発生 / 嗅感覚細胞 / 嗅感覚子 / RNA干渉 / 性行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫の嗅感覚細胞には特定の匂い物質をリガンドとする嗅覚受容体が発現しており、この嗅覚受容体が嗅感覚細胞の嗅質選択性や応答感度を付与している。昆虫の嗅覚受容体には嗅受容体(Olfactory Receptor: OR)型とイオノトロピック受容体(Ionotoropic Receptor: IR)型の二種類があり、OR型、IR型共に、リガンド結合性の受容体蛋白(OR-X、IR-X)とその共受容体蛋白(OR coreceptor: ORco、IR coreceptor: IRco)のヘテロ複合体で形成される。 21年度は20年度に機能的に同定したワモンゴキブリORco(PameORco)についての研究成果をまとめ、学術論文として国際誌に投稿した。くわえて、今まで研究が行われていなかった、ワモンゴキブリの性フェロモン受容体を明らかにするための実験をおこなった。 ワモンゴキブリの成虫オスは、成虫メスが発する性フェロモンであるペリプラノンA(PA)とペリプラノンB(PB)を触角上の性フェロモン感覚細胞で受容し、成虫オス特異的な性行動を解発する。そのため、ワモンゴキブリ成虫雌雄の触角で発現量の異なるOR遺伝子に注目し、RNA干渉、単一感覚子記録、免疫抗体染色の一連の実験手法を行うことで、ワモンゴキブリの性フェロモン受容体を世界で初めて同定した。その結果、PAはPameOR1/PameORcoの複合体で、PBはPameOR1/PameORcoの複合体で受容されることが明らかにした。現在、これら性フェロモン受容体についての研究成果を学術論文としてまとめると同時に、これらの発現を阻害することで、ワモンゴキブリの性行動がどのように変容するのか解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では不完全変態昆虫の成長に伴う性フェロモン受容・処理経路の発達過程を明らかにするうえで、以下の三つの研究を並行して進めている。(1)幼虫と成虫の性フェロモン受容能の違いを明らかにする。(2)成長に伴い、脳内で新規に発生するニューロンを同定する。(3)性行動を駆動する脳内ニューロンを同定する。本項では特に進展がみられた、(1)、(3)の研究課題の21年度の進捗状況について報告する。 (1)の研究課題では、幼虫と成虫の性フェロモン感覚細胞の応答感度の違いが何に起因するか明らかにするため、性フェロモン受容体の機能解析を進めている。21年度はワモンゴキブリの性フェロモン受容体を機能的に同定したため、これらの感覚細胞レベルでの発現量の違いを幼虫と成虫で比較した。機能的な解析が終わっているPameORcoを用いて、各成長段階、成虫雌雄の触角での、受容体遺伝子発現解析の方法と抗Orco抗体を用いた発現分布解析の方法を確立した。この手法をPameOR1、PameOR2にも適用し、成長に伴う感覚子伸長によって、感覚感度の上昇に伴い、性フェロモン受容体であるPameOR1、PameOR2の感覚細胞レベルでの発現量が増加することが明らかになってきている。 (3)の研究課題では性フェロモン受容体のRNA干渉により、二次ニューロンの特定の性フェロモン応答の顕著な消失がみられることが明らかになった。このような特定の性フェロモンの中枢処理能力が欠損した個体において、性フェロモンに対する行動応答解析することによって、性行動解発のための脳内神経機構の解明を目指している。 このように各研究課題において、進展がみられ、一部の研究成果については原著論文としてすでに投稿・受理されている。このため、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
21年度の研究により、ワモンゴキブリの性フェロモン受容機構の全容が世界で初めて明らかになった。22年度は本研究課題の延長に伴う、最終年度であるため、これらの研究成果を原著論文としてまとめ、国際誌に投稿することを優先する。また、21年度までに解析が終わっていない、RNA干渉によって性フェロモン受容体遺伝子の発現を阻害した個体の性フェロモンに対する行動応答も観察する。
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Causes of Carryover |
2021年9月に投稿した論文について、2022年3月の時点ではまだ受理されておらず、その投稿費を当該科研費から捻出するために、次年度使用額が生じた。なお、当該論文は2022年4月13日に受理されている。くわえて、コロナ禍継続の影響に伴い、参加を予定していた学会がオンラインで開催されたので、その分の余剰金が生じた。2022年度は参加予定の学会も対面開催の予定なので、当該科研費より捻出したい。
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