2021 Fiscal Year Research-status Report
X線による昆虫飛翔筋内の蛋白分子運動の実空間イメージング
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19K06777
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
岩本 裕之 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 散乱・イメージング推進室, 客員研究員 (60176568)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | X線回折 / シンクロトロン放射光 / 昆虫飛翔筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、繊維状試料の回転平均化されたX線回折像から、位相を復元して回転平均化されない電子密度を復元する方法を開発した。2021年度には、この成果を専門誌であるIUCrJに出版することができた。 2021年度は、引き続き繊維状試料のX線回折像から3次元の電子密度を復元する方法について種々の計算法を検討した。上記方法のほかに有力な方法はCoherent Diffractive Imaging (CDI)と呼ばれるもので、原理は2000年ごろから知られており、X線ビームに完浴する大きさの2次元試料であれば、実際に構造復元が可能だった例も多数報告されている。しかしこれを3次元の繊維状試料に応用するのは困難で、成功したという報告はない。さらに筋肉のような繰り返し周期のある試料であれば、回折像が飛び飛びになって間が消えてしまう現象が起き、これによりCDI計算が正常に行われる条件であるオーバーサンプリング(構造復元に理論上必要な頻度よりも高い頻度でデータが収集されること)が満たされなくなる。またCDIは繰り返し計算であるので、3次元試料の計算には膨大な時間がかかるのも問題である。 2021年度は、これらの困難にもかかわらず、まずモデル構造としてミオシン頭部で修飾されたアクチン繊維(モデルはPDB=Protein Data Baseにある原子座標を利用して作成)を用い、CDI計算が収束するかどうかを調べた。その結果、種々の工夫により、ミオシン頭部修飾アクチン繊維のようなオーバーサンプリング条件を満たさない試料であっても200回程度の繰り返し計算で完全収束し、3次元構造の完全な復元が可能であることが分かった。現在、これを実際に記録された回折像に適用する方法を試験している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究には膨大な3次元計算を繰り返す必要があり、高性能の計算機が必要であるが、昨今のコロナ禍の影響により半導体の供給が逼迫し、必要なスペックの計算機の購入が不可能であったため、研究が遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度内に実際の測定データをもちいた3次元CDI計算法を確立し、成果を出版する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により半導体の供給が逼迫し、必要なスペックの計算機を購入できなかったため研究が遅延した。次年度使用額は成果の発表にかかる費用(学会発表にともなう費用および論文出版費に充当する予定。
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