2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K06786
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丸山 真一朗 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (50712296)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞内共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
褐虫藻(Symbiodiniaceae科の渦鞭毛藻)はサンゴ共生藻とも呼ばれ、サンゴやイソギンチャクなど宿主刺胞動物との細胞内共生系を営むことで、特に熱帯から温帯の貧栄養海域での一次生産を支える独特な生態的ニッチを構築している。地球温暖化などによる海水温上昇により、「サンゴの白化」と呼ばれる共生が崩壊する現象が問題となっているが、共生の安定性を維持する機構にはまだ不明な点が多い。これまでの我々の研究などにより、宿主刺胞動物と褐虫藻との間での代謝物質のやりとりが、高温ストレスにより影響を受ける可能性が示されていることから、こうした環境応答と代謝調節との関係について、分子から細胞、個体、生態系レベルでの解析を行った。遺伝子発現変動解析からは、褐虫藻と宿主との直接的やりとりだけでなく、褐虫藻細胞周辺のミクロな環境に対する応答が、褐虫藻が自由遊泳状態から共生状態へと移行する過程において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また、生態レベルでの解析において、褐虫藻の光合成生産に重要な時期における気候条件が、その後の宿主の生理・発生、特に産卵行動などと大きく関わっていることを、統計モデルを用いた解析により示すことができた。これらのことは、実験室内で数時間から数日で起こる代謝変動と、野外において数ヶ月レベルで進行する環境応答制御とを、光合成生産という視点で結びつけて解析することが重要であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的としていた糖分泌と代謝、共生安定性との関連について、遺伝子発現レベルでのさらなる解析を行い、順調に進展している。有望な標的となる代謝経路について酵素処理による特徴付け解析が若干難航していたが、別の酵素系を用いて問題を回避できる可能性が見出されたため、今後改良を試みる。個体から環境レベルでの解析は予想以上の進展が見られ、さらなる発展的解析の展望を持つことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子レベルでの解析はこれまで通りに進める一方、生化学的解析と生態学的解析という異なるレベルの解析を実現可能性などを吟味しつつ慎重にエフォートを割り振りながら進めていきたい。
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[Journal Article] Global shifts in gene expression profiles accompanied with environmental changes in cnidarian-dinoflagellate endosymbiosis.2019
Author(s)
Ishii Y, Maruyama S, Takahashi H, Aihara Y, Yamaguchi T, Yamaguchi K, Shigenobu S, Kawata M, Ueno N, Minagawa J.
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Journal Title
G3: Genes, Genomes, Genetics
Volume: 9
Pages: 2337-2347
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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