2022 Fiscal Year Research-status Report
A model of compensatory evolution for microRNA and its target genes
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19K06789
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
楠見 淳子 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (20510522)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯塚 勝 福岡女子大学, 国際文理学部, 学術研究員 (20202830) [Withdrawn]
一ノ瀬 元史 筑紫女学園大学, 現代社会学部, 教授 (30150460) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 補償的進化 / microRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
miRNA分子内の相補配列は構造上重要であるが、一部はターゲットとする遺伝子の相補配列と直接作用する配列(ガイド鎖)となっているため、miRNAとターゲットとする遺伝子間の相補配列は共進化していると考えられる。本研究課題では、miRNAの作用機序に基づいた分子進化モデルを構築し、シミュレーション解析によりその進化の動態を解明する。miRNAとターゲット遺伝子が1対1で対応するシングルターゲットモデルとmiRNAとターゲット遺伝子が1対2で対応するマルチターゲットモデルを構築し、固定待ち時間と各遺伝子座の変異量(平均ヘテロ接合度)の分析を行い、miRNA多様化の進化的要因について検証する。シングルターゲットモデルを用いたシミュレーション解析の結果、miRNAとターゲットとする遺伝子間の連鎖が強いほど固定待ち時間は平均的に短くなる傾向が見られた。また、その効果は特に、miRNA分子内、ガイド鎖とターゲット遺伝子間の相補性が同等に適応度に影響する場合に強く現れていた。さらに、マルチターゲットモデルを用いたシミュレーションを行ったところ、2つのターゲット遺伝子の有害度を重み付き平均した適応度スキームの場合、シングルターゲットモデルよりも平均固定待ち時間が短くなる条件があることが示された。この結果は、遺伝子の重複や消失が相互作用するmiRNA遺伝子の進化速度に影響する可能性を示唆している。一方で、複数種のモデル生物におけるmiRNAの変異量についてデータ解析を行ったが、これまでのところ、シミュレーション解析の結果を強く支持するデータは得られていない。これは、miRNAとターゲット遺伝子が1対1や1対2の単純な組み合わせのまま進化している場合がまれであり、実際には複数のコピーを維持しながら進化している可能性が高くそれが進化速度や変異量に影響しているためであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、公開されているモデル生物の多型データを用いた検証を行った。しかしながら、シングルターゲットモデル(miRNAとターゲット遺伝子が1対1で対応する)、マルチターゲットモデル(miRNAとターゲット遺伝子が1対2で対応する)いずれも実際の多型データを説明できる結果を得られていない。前年度に報告したように、特にマルチターゲットモデルは、平衡状態が大きく変動しながら保たれており、得られる結果の分散も非常に大きくなっていること、また、miRNAが多重遺伝子族を形成しているだけでなく、それらのmiRNAの機能の有効性を配列のみからは推定することが困難であることなどが挙げられる。シングルターゲットモデルの結果についてはすでに論文を投稿中であるが、まだ受理されていない。
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Strategy for Future Research Activity |
複数種のモデル生物におけるmiRNAの変異量のデータ解析では、シミュレーションで得られた結果を強く支持する有意な結果は得られていない。今後は、重複したmiRNAのうち、変異の蓄積によって完全に機能を失い偽遺伝子化する効果をモデルに組み込むことにより、より実態に即したシミュレーションを行い、実際の多型データとの比較を行う。また、論文の受理にむけ解析を追加するほか、学会発表を含め進めていく。
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Causes of Carryover |
本年度は投稿論文の受理に至らず論文掲載料を使用できなかったこと、また、学務の兼ね合いで国際学会に参加することができなかったため旅費及びその他に計上していた予算に余剰が生じた。 次年度は当初予定していた国際学会発表や論文受理を目指し務める。
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