2019 Fiscal Year Research-status Report
Test of the "cascade reinforcement" and character displacement on multiple characters of seashore flightless weevils
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19K06790
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松林 圭 九州大学, 基幹教育院, 助教 (60528256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 弘昭 東京農業大学, 農学部, 教授 (80332849)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 形質置換 / 波及的隔離強化 / 海浜性昆虫 / 移動分散 |
Outline of Annual Research Achievements |
複数種が同所的に分布する地域において、異所的な地域に比べて特定の形質が種間でより顕著に分化する“形質置換”は、種間相互作用が形質の多様化を促している直接的な証拠である。形質置換は様々な生物で報告されているが、種間のどのような軋轢によって生じたかが解明されているケースは少ない。さらに、形質置換が生じているとき、それぞれの種内では、他種と同所的な集団とそうではない集団の間においても同様に形質の分化が生じるため、これが間接的に種内集団間に生殖隔離を生み出すことがある。この“波及的隔離強化”については、その重要性が指摘されている一方で検証例はほとんど存在しない。 本研究では、日本に生息し飛翔能力を欠く海浜性ゾウムシの近縁な2種のオス交尾器内袋骨片の形状と鞘翅色彩に関して、形質置換の生態的要因および進化的背景を調査するとともに、波及的隔離強化が生じているかを検証することを目的としている。 初年度においては、全国的な野外集団での形質状態を調査し、海岸での生息状況や環境勾配といった基礎生態学的な情報を集めた。また、東京農大に保管されている全国から採集されたサンプルを用いて、これまでに得られた集団の形質測定を開始した。さらに、次年度以降の実験に用いる野外母集団を調査・採集して、継代飼育の系統を作成した。 さらに、上記2種のゾウムシについて、海水上での生存日数(海水耐性)を他の昆虫とともに調査して、一部の海浜性昆虫が予想外の長期にわたって海水上で生存することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた野外集団の採集調査は滞りなく進み、野外での生息状況と環境勾配との関係性についてのデータも集められた。採集した標本の形質測定については現在進めている最中であるが、予想した通りの形質置換のパターンが見えてきている。一方で、分子集団遺伝学的解析については、これまで用いられてきたミトコンドリアCOI領域だけでは変異が少ないため、調節領域のシーケンスを進める予定だが、それでも変異量が不足する可能性もあるため、次世代シーケンサーによるRAD-seqの使用を視野に入れている。次年度も引き続いて残りの野外集団の採集を進めるとともに、実験用飼育系統の作成と維持により力を入れる。
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Strategy for Future Research Activity |
野外での採集調査については、未調査の地域を中心に継続して行うほか、両種が同所的に生息する北九州地方・中国地方において、生息環境のより詳細なデータを収集する。 今後は継代飼育による実験集団の大量増殖システムを確立することが最大の要点になる。海砂とニンジンを用いた飼育方法で羽化成虫を得られるものの、幼虫の生死がわからないために効率が悪かった。幼虫の様子がモニターできるよう、基質となる砂をアガロースゲルに変えた飼育を試すとともに、餌についても人工飼料の使用を試みる。
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