2021 Fiscal Year Research-status Report
チョウ目昆虫における翅形質の退行的な進化を制約する発生・分子機構の解明
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19K06791
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
新津 修平 東京都立大学, 理学研究科, 客員研究員 (70446524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 貴史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 契約研究員 (20726707)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | チョウ目 / 翅の退化 / 性的二型 / フユシャクガ / フチグロトゲエダシャク / 遺伝子発現 / 分子メカニズム / 翅原基 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、フチグロトゲエダシャクの蛹期に翅原基内部で生じる翅退縮現象の背景にある分子メカニズムの解明を目指して解析を進めている。 今年度は、フチグロトゲエダシャク蛹期における翅原基の発達を詳細に解析することを目的として、翅原基形成を0、12、24、36、48時間毎に時系列で追ったサンプリングを行い、そこから抽出したtotal RNAを用いて遺伝子発現パターンの変化を追跡調査し、翅退縮に重要な影響を与えるステージの推測を行なった。その結果、プログラム細胞死を誘導すると考えられるカスパーゼ3様遺伝子において、翅原基形成0時間から12時間でメス特異的に発現ピークが見られた。一方、翅形成に重要な遺伝子として知られるvestigialは、0時間ではメスで高発現が見られたが、その後の発育過程では雌雄で顕著な差は見られなかった。これらの結果から、プログラム細胞死に関わる遺伝子が、翅原基の分化のごく初期にメス特異的な働きを有することが示唆された。また、今年度の研究成果として、一昨年に行った蛹化15日後の休眠蛹に脱皮ホルモンを微量投与した休眠打破蛹の翅組織の発生分化と性的二型の分化を時系列に観察した結果得られた細胞小器官の微細構造の発生動態について論文として海外国際誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言下、共同研究先の農研機構(茨城県つくば市)で予定していた解析が、研究所の外来研究者の入行制限により進めることができず、年末に作業を延期した結果、最終年度である今年度において研究結果をまとめ、進めていくことが困難となった。延長届を提出し、次年度の初めに研究がスムーズに進められるように、年度末に必要な予備実験を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今後予定しているNGS解析に最適な発育ステージを確定する為に蛹化2日後と蛹化15日後の休眠蛹に様々な分量の脱皮ホルモンを投与し、蛹と脱皮ホルモンの量の検討を行う。また、翅原基形成0―12時間に焦点を当て、NGS解析を行い、メス特異的翅退縮に重要な働きを示す遺伝子のスクリーニングを進める。
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Causes of Carryover |
前年度に遺伝子発現解析を遂行する予定だったが、昨年8月の共同研究先の研究所でまん延防止のため入構できず、次年度に実験と外注を繰り越さねばならなくなった。次年度は前年度に行えなかった遺伝子解析の外注費に予算を計上する予定である。
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