2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K06793
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
川口 眞理 上智大学, 理工学部, 准教授 (00612095)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | seahorse / brood pouch / digestive enzyme |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は育児嚢で特異的に発現する遺伝子の一つであるpatristacinとその相同遺伝子であるpactacinに着目して研究を進めた。それらの遺伝子の局在を調べた結果、patristacin遺伝子についてはシグナルを検出することができなかったが、pactacin遺伝子が膵臓で発現していることを明らかにしている。そこで本年度は、pactacinの機能を明らかにするために解析を進めた。ウェスタンブロットにより、膵臓からはプロ型が、消化液からは成熟酵素を検出できた。pactacinはタツノオトシゴだけでなく、メダカにも存在することから、メダカを用いて、HPLCにより、消化酵素の精製を行い、ウェスタンブロットや活性染色などにより、pactacinとトリプシンやキモトリプシンと予想される酵素の活性を検出できた。魚類には胃のある魚と胃のない魚がいることが知られており、胃のない魚では、トリプシンやキモトリプシンが消化管内に分泌されて消化すると考えられてきたが、本研究により、これらに加えて、pactacinが主要な消化酵素の一つとしてはたらいていることを明らかにできた。 この他に、育児嚢の電子顕微鏡観察も行った。その結果、育児嚢の表面は大仏の螺髪そっくりな細胞でおおわれていることが分かった。また、この「螺髪」細胞に特異的に発現している遺伝子を見出した。他の魚類のゲノムからは相同遺伝子が見つからなかった。タツノオトシゴのこの遺伝子の周辺にはトランスポゾンが高頻度で見つかることから、トランスポゾンにより、タツノオトシゴの系統で新規に獲得した遺伝子だと予想される。この新規な遺伝子が、タツノオトシゴの体表面にだけ見られる特徴的な「螺髪」構造を作り出しているのではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タツノオトシゴの育児嚢に着目していた研究課題ではあるが、育児嚢で特異的に発現する遺伝子の進化過程を調べていく過程で、魚類には新奇な消化酵素があるという新発見につながる成果を出すことができた。 また、タツノオトシゴに特徴的な形態が、タツノオトシゴで新たに生じた遺伝子によってもたらされている可能性を見出した。これにより、独特な形態をしているタツノオトシゴがどのように進化してきたのか、を理解するために、今後のさらなる研究へとつながる発見になった。
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Strategy for Future Research Activity |
概要に記載したとおり、タツノオトシゴの育児嚢の電子顕微鏡(TEMとSEM)観察を行ったところ、特徴的な形態を見出した。さらに、この特徴的な細胞で特異的に発現している遺伝子を見出した。今年度は、新規遺伝子がどのような進化過程を経たのかをより詳細に解析する予定である。そのために、タツノオトシゴが属するヨウジウオ科魚類の魚類のゲノム配列を決定し、タツノオトシゴと比較することで、新規遺伝子の進化過程を明らかにしたい。 また、引き続き育児嚢の各組織で発現している遺伝子の解析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
論文の掲載費として約30万円の支出を予定していたが、掲載が3月31日と、年度末になったため今年度の支出とはならず、2021年度に掲載費として使用する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] RADSex: A computational workflow to study sex determination using restriction site‐associated DNA sequencing data2021
Author(s)
R. Feron, Q. Pan, M. Wen, B. Imarazene, E. Jouanno, J. Anderson, A. Herpin, L. Journot, H. Parrinello, C. Klopp, V. A. Kottler, A. S. Roco, K. Du, S. Kneitz, M. Adolfi, C. A. Wilson, B. McCluskey, A. Amores, T. Desvignes, F. W. Goetz, A. Takanashi, M. Kawaguchi 他計36名
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Journal Title
Molecular Ecology Resources
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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