2020 Fiscal Year Research-status Report
横断的クロスリンクプロテオミクスによるシナプスタンパク複合体の進化的起源の解明
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19K06796
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
早川 英介 沖縄科学技術大学院大学, 進化神経生物学ユニット, 研究員 (20739809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 寛 沖縄科学技術大学院大学, 進化神経生物学ユニット, 准教授 (80356261)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生物進化 / 神経 / タンパク複合体 / プロテオミクス / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に原始的な生物のタンパク複合体の分析の実施及び分析系構築の最適化を行った。本研究課題では一般的なプロテオミクスでは明らかにできないタンパク複合体の同定を行うという点と、一般的なモデル動物ではない原始的な動物で行うという点で非常に挑戦的な課題と言える。そこで、高感度・高いスループット性・高い再現性を実現するための分析・データ解析システムの構築が特に重要である。 昨年度行ったクロスリンカーによるタンパク間の架橋に加えて、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィーによるタンパク複合体の分離・フラクショネーション(プロテインコリレーションプロファイリング)の系を巨大複合体に対応できるように条件検討を行った。 プロテインコリレーションプロファイリングは大量な試料を正確に比較定量分析する必要があり、実験操作が煩雑で時間を要するものであった。そこで本年度はLC-MS用の大量の試料にハイスループットで対応できるように磁気ビーズによるタンパクのLC-MS用試料調整法を最適化することで、高いスループット性と再現性を実現した。 LC-MSデータ解析に関しては昨年すでに作成したスペクトルライブラリに対して由来するタンパクのクラス・機能・局在・オントロジー等を付加することで、LC-MSデータ解析からタンパク複合体同定・機能推定を効率よく行うデータ解析系を構築した。 これまでの試料調整・LC-MS分析系・データ解析システムの構築により、高感度・高い再現性のタンパク複合体分析が可能になった。本分析・データ解析システムは本研究課題の実施に役立つだけではなく、他の原始的な生物・非モデル動物のタンパク複合体研究にも広範囲で活用することが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度では複合体内のペプチドペアを直接同定するために幾つかの代表的なクロスリンカーを検証したが、実際にMS/MSで同定できるクロスリンクペプチドの種類は当初想定していたよりも少なく、結果複合体推定の網羅性が低いことが分かった。 それに対してサイズエクスクルージョンクロマトグラフィーによるタンパク複合体の分離・フラクショネーションをLC-MSで網羅的に比較定量することでシグナルの共溶出パターンからタンパクの複合体構成を予測するアプローチ(プロテインコリレーションプロファイリング)はより広範囲・網羅性の高い複合体推定を行えることが分かった。そこで、プロテインコリレーションプロファイリングを主軸としながらクロスリンカーを相補的なデータとする方向性に修正した。 一方でプロテインコリレーションプロファイリング分析するLC-MS分析の量が多くなってしまい(1試料から60LC-MS程度)、試料調整及び再現性の高いLC-MS分析を実現することが課題となった。試料調整に関しては磁気ビーズを用いてトリプシン処理法をさらにハイスループット、高い再現性となるように独自にプロトコルを改良し、LC-MS分析に関してはSWATH法の条件の見直しを行うことで、高いスループット性と再現性が実現された。 LC-MSデータ解析に関してはSkylineを基本ツールとして使いながらも、スペクトルライブラリにリンクした各種タンパク情報を独自に付与することで、タンパク複合体の組成・局在・機能を迅速に解析できるプラットフォームを作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでで、一般的なプロテオミクスでは明らかにできないタンパク複合体の同定を非モデル動物の原始的な動物で行うというために、高感度・高いスループット性・高い再現性を実現するための分析・データ解析システムの構築を行った。 今後はまず、Nematostella vectensisを用いてタンパク複合体推定をプロテインコリレーションプロファイリングを主軸としながら行う。複合体の分離・フラクショネーションはサイズエクスクルージョンクロマトグラフィーで行うが、分離が複合体推定に十分な分解能を持たない場合は他の分離カラム(イオン交換)などを併用することで、データの分解能を上げることで正確な複合体同定を実現する。
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Causes of Carryover |
分析条件(フラクショネーション用カラム等)の条件最終決定が本年度では終わらず、次年度に持ち越されたため。次年度で最終的に決定した分析条件に必須な物品を購入予定。
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