2021 Fiscal Year Research-status Report
Evolutionary mechanisms for thermal perception associated with the spatio-temporal niche diversification in amphibians
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19K06797
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| Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
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Principal Investigator |
齋藤 茂 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, 助教 (50422069)
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| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | 温度適応 / 温度感覚 / 高温忌避 / 温度センサー / 適応進化 / 両生類 / 幼生 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
環境適応における温度感覚の進化的な変化およびその役割を明らかにするため、無尾両生類の幼生を用いた比較解析を進めている。ニホンアカガエルは早春に産卵し、幼生は低温環境で成育するのに対し、リュウキュウカジカガエルは一部の地域では温泉にも幼生が成育できるほどの高温耐性を有している。繁殖の時期や利用する水場の違いにより幼生の温度適応能も進化過程で変化してきたと考えられる。本研究では、リュウキュウカジカガエル、カジカガエル、シュレーゲルアオガエル、ツチガエル、ニホンアカガエルの5種を用い、各種の幼生の臨界最高温度および忌避温度を行動実験により測定した。どちらの値もニホンアカガエルで最も低く、リュウキュウカジカガエルで最も高い値を示し、2つの指数の間には5種間で明瞭な相関関係が認められた。生息地における野外調査により幼生が高温に曝される機会が多い種ほど、幼生の温度耐性や忌避温度が高い傾向があることが分かった。また、忌避温度の種差は臨界最高温度のそれより2倍程度大きいことから、異なる温度ニッチに適応する際に忌避温度はより柔軟に変化してきたことが明らかとなった。
次に、高温受容のセンサー分子としてはたらき、多様な動物種において忌避応答に関与するTRPA1のチャネル特性の比較解析を行った。その過程で、両生類特異的なTRPA1のスプライシングバリアントを発見した。既知と新規のスプライシングバリアントは温度応答特性が異なり、また、スプライシングバリアント間の機能差は種ごとに異なるパターンを示した。更に、TRPA1の温度応答特性と個体レベルの忌避温度の間には密接な関連性があることが示され、多様な温度ニッチに適応する進化過程においてTRPA1の温度応答特性の進化的変化が重要な役割を担ってきたことが明らかとなった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、時空間的に異なる温度環境に適応した無尾両生類の幼生を対象に1）野外調査、2）実験室における行動解析、3）温度センサー分子の機能解析、4）遺伝子改変個体を用いた行動解析の4つの研究手法を主軸に生態から分子レベルまで統合的な研究を展開することを計画した。
1)に関連して、リュウキュウカジカガエル、ニホンアカガエル、シュレーゲルアオガエルが成育する水場において継時的な温度測定および野外観察を行い、これらの種の幼生が野外で実際に経験する温度域や高温暴露時の行動観察を行った。また、2)に関連し、5種の幼生の臨界最高温度および忌避温度を測定し、種間で生息地の温度条件に応じた種差があることを明らかにした。更に、3)に関連し、行動実験を行った5種の内、3種から高温センサー分子であるTRPA1とTRPV1を単離し機能解析を進めてきた。一方で、2種については塩基配列情報が存在しなかったことによりTRPA1遺伝子の単離が難航した。最終的にはこれらの2種についてもTRPA1遺伝子を単離することができたが、電気生理学的な解析が完了していない。4)では、ネッタイツメガエルを用いTRPV1およびTRPA1のノックアウト系統の作出が完了し、TRPA1のアゴニストに対する行動応答の解析を進めているが、温度応答行動を調べるには至っていない。コロナ禍により野外調査や個体採集が行えない期間があり、特に、リュウキュウカジカガエルの調査地である離島（鹿児島県、トカラ列島、口之島）には2020年度以降に行くことが出来なかった。1)から3)の研究計画で多くの成果が得られているが、当初に予定に達していない点もあることから研究期間を1年延長した。
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| Strategy for Future Research Activity |
これまで未解析であったシュレーゲルアオガエルとツチガエルのTRPA1を用い、電気生理学的な実験を行い、化学物質や温度応答特性を調べる。本研究で行動解析を行った5種のTRPA1の温度応答特性と個体の忌避行動の間に相関性があるかを調査する。
次に、両生類幼生の温度応答行動におけるTRPA1およびTRPV1の役割を解明するために、各遺伝子をノックアウトしたネッタイツメガエルを用いた解析も進める。野生型および遺伝子破壊個体の幼生を用いた行動解析を行い、高温応答におけるこれらの遺伝子の役割を調べる予定である。
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| Causes of Carryover |
試薬やプラスチック製品などの消耗品を一部購入しなかった。コロナ禍の影響で予定していた国内外の学会がオンライン開催に変更され、また、リュウキュウカジカガエルの調査を行っている離島（鹿児島県、口之島）での野外調査を断念せざるを得なかったため、予定していた学会参加費や旅費などを使用できなかった。そのため今年度に予定していた助成金を次年度に繰り越した。今後、実験に必要な試薬や器具などの物品を購入する予定である。
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Research Products
(5 results)
