2021 Fiscal Year Research-status Report
海の底から泳ぎ出す:小型底生甲殻類による泳ぐ矮雄の獲得と進化史
Project/Area Number |
19K06800
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
角井 敬知 北海道大学, 理学研究院, 講師 (70723360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蛭田 千鶴江 北海道大学, 理学研究院, 特別研究員(RPD) (20723018)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 甲殻類 / 矮雄 / 系統進化 / タナイス / 分類 / 性表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,タナイス目甲殻類で見出された「雌雄ともに生涯を通じて分散能力がとても低い動物群による矮雄(メスの体サイズの半分以下しかない小さなオス)の獲得」という現象について,分類学的,系統学的,形態学的アプローチからその進化史を理解することである.1880年代より存在が知られるタナイス類の矮雄であるが,過去の研究は主として形態情報に基づいた記載的内容であり,DNA配列情報を用いた研究はほとんど行われていない. 2021年度は,主に以下のような成果を挙げた.(1)系統解析に用いる予定の種で未記載種であると判断されたもののうち,2種についてそれぞれ記載論文を執筆した. これら2報は査読付き英文誌に投稿,うち1報については既に出版された.(2)これまでDNA配列情報が得られたことのない複数のグループについて,塩基配列情報を決定した.2021年度は特にRNA-seqデータを活用したタナイス目内の高次分類群間の系統関係の把握に取り組み,現生4上科を網羅した23種のタナイス類を含むRNA-seqデータに基づく系統解析を行った.得られた結果については,査読付き英文誌に投稿,既に出版された.ミトコンドリアゲノムの全長配列の決定も継続中である.(3)タナイス類1種の性表現に関するデータを得た.本成果については,査読付き英文誌に投稿,現在審査中である.加えて副次的な成果として(4)調査の過程で得られたタナイス以外の甲殻類に関する機能形態・生態に関する情報をまとめ,2報の論文を執筆した.これら論文については,査読付き英文誌に投稿,既に出版された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
形態学的解析に関する作業の進展が少し遅れているものの,種同定,分子系統解析は順調に進んでいる.よっておおむね順調に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き新型コロナウイルス感染症流行の影響で採集調査の実施困難が予想されるため,次年度も種同定と分子系統解析を重点的に進める予定である.
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス感染症流行の影響で採集調査がほぼ行えず,同じ事情から研究室の利用が大きく制限されたことにより,本研究課題に関するあらゆる研究活動が大きく制限されたため. (計画)次年度使用額は,採集調査関係費と,分子系統解析実施に関わる費用に充てる.
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