2022 Fiscal Year Research-status Report
海の底から泳ぎ出す:小型底生甲殻類による泳ぐ矮雄の獲得と進化史
Project/Area Number |
19K06800
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
角井 敬知 北海道大学, 理学研究院, 講師 (70723360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蛭田 千鶴江 北海道大学, 理学研究院, 特別研究員(RPD) (20723018)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 甲殻類 / 矮雄 / 系統進化 / タナイス / 分類 / 性表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,タナイス目甲殻類で見出された「雌雄ともに生涯を通じて分散能力がとても低い動物群による矮雄(メスの体サイズの半分以下しかない小さなオス)の獲得」という現象について,分類学的,系統学的,形態学的アプローチからその進化史を理解することである.1880年代より存在が知られるタナイス類の矮雄であるが,過去の研究は主として形態情報に基づいた記載的内容であり,DNA配列情報を用いた研究はほとんど行われていない. 2022年度は,主に以下のような成果を挙げた.(1)系統解析に用いる予定の種で未記載種であると判断されたもののうち,4種について計3報の記載論文を執筆し,査読付き英文誌に投稿した.うち2報については既に出版され,残る1報については現在査読中の段階にある.(2)これまでDNA配列情報が得られたことのない複数のグループについて,塩基配列情報を決定した.2022年度もミトコンドリアゲノムの全長配列決定を継続して行った.(3)タナイス類1種について形態観察および飼育実験を通して性表現に関するデータを得た.本成果については論文を執筆,査読付き英文誌に投稿し,既に出版された.(4)これまでタナイスで得られたことのないゲノムサイズに関する分析を行った.得られた成果について現在論文を執筆中である.加えて副次的な成果として(5)調査の過程で得られたタナイス以外の甲殻類の1種について,記載分類・分子系統解析を行った成果をまとめ,1報の論文を執筆した.これについては査読付き英文誌に投稿,既に掲載受理の報を受けた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
形態学的解析に関する作業の進展が遅れているものの,種同定,分子系統解析は順調に進んでいる.よっておおむね順調に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は形態学的解析と分子系統解析を重点的に進める予定である.
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス感染症流行の影響で採集調査がほぼ行えず,同じ事情から研究室の利用が制限されたことにより,本研究課題に関するあらゆる研究活動実行に制限があったため. (計画)次年度使用額は,採集調査関係費と分子系統解析実施に関わる費用に充てる.
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