2021 Fiscal Year Research-status Report
近縁な寄主植物への隠蔽的な局所適応が植食性昆虫の種分化を促す効果の検証
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19K06803
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
藤山 直之 山形大学, 理学部, 教授 (90360958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松林 圭 九州大学, 基幹教育院, 助教 (60528256)
横山 潤 山形大学, 理学部, 教授 (80272011)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植食性昆虫 / 寄主植物 / 局所適応 / 生息場所隔離 / 移入者の生存不能 / ヤマトアザミテントウ / アザミ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヤマトアザミテントウが各地点で寄主としているアザミ類に対して示す選好性、および各アザミ上でのテントウの成育能力に関し、青森県と福島県の2地点のほか、昨年度まで対象に加えられていなかった秋田県の1地点を対象に飼育実験を実施した。本年度までの3年間で、計画していた5地点(青森県、岩手県、秋田県、山形県、福島県)からのデータがほぼ揃い、以下の3点が明らかになった。 1.成虫の食性:地点の組み合わせによって、局所適応の存在、つまり潜在的な“生息場所隔離”の発達が支持される。 2.幼虫の成育能力:地点の組み合わせによって、潜在的な“移入者の生存不能”の発達が支持される。 3.以上の潜在的な局所適応の発達の程度は、地点間の地理的距離そのものよりアザミ類の質的変異に大きく影響されており、とりわけ青森県での寄主であるミネアザミの質が他地点のアザミと大きく異なっていることが関与している。 青森県と福島県のテントウ集団およびこれらが寄主としているアザミ類を対象に、網室への放虫実験を実施し、2集団間に潜在的に発達している局所適応の程度を定量的に評価した。2種のアザミ上で作用する隔離障壁(生息場所隔離と移入者の生存不能)の強さは非対称であり、青森県のミネアザミ上での隔離強度が0.7~1.0とほぼ完全であったのに対し、福島県のナンブアザミ上では-0.3~0.3であった。全体として、現在の局所適応を通じて潜在的に発達している生殖隔離の強度は約0.5となり、種分化の途上にあると捉えることができるものの、現在の状態で隣接させた場合には遺伝子流動が生じ局所適応そのものが崩壊することが予測された。 テントウ集団間の遺伝的関係(遺伝的分化と遺伝子流動の規模)の解明に関しては、解析に用いるサンプルの選定およびDNA抽出をほぼ終え、解析に用いるSSRマーカーの絞り込みを実施できる段階となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
野外調査・飼育実験・網室実験に関しては、ほぼ当初の計画通りに進行させることができたが、テントウ集団間の遺伝的関係の解明に取り組む十分な時間が確保できず、完了することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を1年間延長したことを受け、特に進行が遅れているテントウ集団間の遺伝的関係の解明に集中的に取り組み、これを完了させる。また、野外調査と飼育実験に関しては、これまでに得られているデータを精査しながら、補足データを収集する。全体として、データはかなり蓄積されてきており、分析も進んでいることから、包括的な研究成果を学会発表および論文として公表する。
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Causes of Carryover |
理由:新型コロナウイルスの蔓延が終息せず、諸学会がオンラインで開催されたことによって成果発表旅費の支出が抑えられたこと、および昆虫集団間の遺伝的関係の解明が遅れており、これに伴う予算消化が進まなかったことによる。 使用計画:調査・研究と成果発表旅費、および昆虫のDNA解析に必要な試薬類と消耗品の購入費用にあてる。
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Research Products
(4 results)