2019 Fiscal Year Research-status Report
When and how did Japanese allotetraploid fern species of which both parent species are extant in Japan originate?
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19K06804
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
綿野 泰行 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (70192820)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 同型胞子シダ植物 / 異質倍数体 / 生態ニッチモデリング / 分岐年代推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本におけるシダ植物の異質四倍体種システム(異質四倍体とその推定祖先二倍体の3種が全て日本に現存するトリオ)を拡張するため、「イシガキウラボシはコウラボシとホテイシダの異質四倍体」という仮説の検証を行った。cpDNAの系統解析ではイシガキウラボシはコウラボシとクレードを形成した。核遺伝子であるPgiCの系統解析では、イシガキウラボシからは、倍数化による遺伝子座重複に起因して二種類の配列が検出され、一つはコウラボシと、もう一つはホテイシダとクレードを形成した。従って上記の仮説は支持され、母方はコウラボシである事が判明した。イシガキウラボシは、cpDNAで二種類、PgiCで一種類のみ遺伝子型を示し、単一起源であると考えても矛盾は無い。またこのイシガキウラボシのシステムにおけるニッチモデリングも行い、祖先二倍体種であるホテイシダとコウラボシの間には明確なニッチ分化が存在する事(I=0.19)、またシガキウラボシのニッチ はホテイシダとは大きく異なるが(I=0.29)、コウラボシとは極めて類似しており、有意差はない(I=0.82)ことを明らかにした。 主題であるクロノキシノブの倍数化起源の年代推定については、事前解析を行った。まず核遺伝子マーカーのPCRプライマー作成のために、二倍体ノキシノブを対象に、RNA-seqを行った。今後得られた配列の新規アッセンブルを行う予定である。また、年代推定のために、祖先二倍体種である日本産ノキシノブとナガオノキシノブの分岐年代推定を試みた。基本的にWang et al. (2010)の葉緑体4領域のデータセットに日本産の日本産ノキシノブとナガオノキシノブのデータを追加し、LepisorusとNeolepisorusの共通祖先を28~30MYAの一様分布と設定した。結果として7.2Myaという分岐年代が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クロノキシノブの倍数化起源の年代推定については、各分類群の複数個体を対象にRNA-seqを行い、直接的にデータを得ることを予定していた。しかし、展開したばかりの葉について現地で処理をしないと、解析に必要なRNA量が得られない事が判明した。また、倍数化起源が最終氷期最大期(約2万年前)といった近年であった場合は、初期に予定したようにBEAST2を用いるより、Isolation with Migration (IM)モデルを使った方が良い可能性もある。IMモデルを使う場合、有効な集団サイズを正しく推定さるためには、サンプル数をある程度多く用いる必要がある。そこで、RNA-seqは1個体に止め、PCRベースでデータを得るよう方針変更した。 また、日本におけるシダ植物の異質四倍体種システムを網羅的に開発する必要性があると考え、文献検索・情報交換を積極的に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
クロノキシノブの倍数化起源の年代推定については、二倍体ノキシノブのRNAデータを元に、過去の文献から実績のある遺伝子座のPCRプライマーの作成を行っていく。クロノキシノブについては十分量のサンプルが既に入手されているが、祖先二倍体種のサンプルが明らかに少ないため、新規の採集が必要である。 既存の異質四倍体種システムで、分子系統学的な裏付けが得られたものについては生態ニッチモデリングによるニッチの比較を順次行い、パターン分けを行っていく。分子系統学的な裏付けが無いものについては、今年度のイシガキウラボシの例にならって、仮説の検証を積極的におこない、網羅的な調査を目指す。
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Causes of Carryover |
当初計画ではRNA-seqを各分類群について行い、そこから解析に用いる塩基配列を得る予定であった。しかし、RNA-seqのためのサンプルの条件が厳しい事が判明したため、RNA-seqの回数を抑えた。その結果として残金が生じた。解析をPCRベースに移すことにしたので、この残金は、PCR用のプライマーやTaqポリメラーゼ等、PCRベースでの解析に必要な試薬代金として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)