2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K06810
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
佐々木 邦夫 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (10215717)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 魚類 / 側線系 / 感丘 / 神経支配 / 収斂 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では研究計画に従い、基本的なスズキ系魚類の側線系(感丘の分布およびその神経支配)の観察を進めた。観察した分類群はハオコゼ科、アジ科、ニザダイ科、ツノダシ科、タナバタウオ科、タカサゴイシモチ科などである。これまで見逃されてきた、側線系の示す特徴が数多く明らかになった。神経系観察の目的は、一見類似した感丘の分布を神経支配によって、相同か非相同であるかの判断をすることにある。この目標の1到達点として下記の論文が公刊された。この論文では、テンジクダイ科内における非常に類似した表在感丘の分布が、複数の分類群間で収斂進化したことを神経支配に基づき論じている。
Convergent evolution of the lateral line system in Apogonidae (Teleostei: Percomorpha) determined from innervation.M Sato, M Nakae, K Sasaki - Journal of morphology, 2019 - Wiley Online Library https://doi.org/10.1002/jmor.20998
テンジクダイ科は、多数の表在感丘を有することで、コモリウオ科との姉妹関係が示唆されている。当該年度では、コモリウオ科の表在感丘の分布とその神経分布を詳細に観察し、収斂進化の結果であることが判明した。この知見はすでにCopeia誌に投稿し、現在査定のプロセスにある。Minor revisionであるので、近日中に公表される予定である。コモリウオ科における表在感丘は約373,000個であり、これはこれまでに記録されたどの魚種よりも多かった。SEMを用いた表在感丘(有毛細胞)の観察結果から、本科魚類は全方位からの刺激(流れ)に対してほぼ等価の感受性を有することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スズキ系魚類でベーシックと考えられる魚類についての観察は順調に進行している。この過程で側線系の支配において2種類の神経枝が関与することがわかってきた。第1は側線鱗を貫通する神経枝であり、第2は2枚の側線鱗の重複する部位を通過する神経枝である。これら2種類の神経枝のスズキ系(および他の系)における分布様式は系統を考察する上で重要な鍵になってくると予測される。新たな分類・系統形質として有効性を検証する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
活発に遊泳する魚と夜行性の魚における表在感丘とその神経支配を明らかにする。活発に遊泳する種(表在感丘の減少要因として働くとされる)と夜行性の種(増加要因として働く)を観察し、過去の知見に検証を加えるとともに、神経支配の多様性および共通性について考察をくわえる。また上記二つの生態的な特性にとらわれず、様々な生態的特性を示す魚種をトピックス的に観察し、知見の集積につとめる。
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Causes of Carryover |
287円の残が生じた。次年度の物品費に回し、使用する計画である。
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