2020 Fiscal Year Research-status Report
バック・トゥ・ザ・ホンシュウ:伊豆諸島起源植物の本州への逆移入と定着過程を探る
Project/Area Number |
19K06819
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀江 佐知子 東北大学, 学術資源研究公開センター, 協力研究員 (30838024)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 伸二 人間環境大学, 人間環境学部, 准教授 (40228945)
牧 雅之 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (60263985)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 種分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
伊豆諸島は本州と陸続きになったことがない海洋島で,いくつかの固有植物種が知られている.それらは本州に分布する祖先種が伊豆諸島に移入した後,島嶼域での隔離によって生じたものと考えられる.しかし,本州と伊豆諸島の距離を考えると伊豆諸島で分化した固有種が再び本州に逆移入して定着する可能性があり得るが,実証的な研究例はない.本研究で研究対象とするユキタノシタ科の多年生草本であるイズノシマダイモンジソウ(Saxifraga fortuneii var. jotanii(Honda) Wakab.)は,伊豆諸島全島と房総半島のみに分布する植物である.この分布パターンは,この種が祖先種であるダイモンジソウ(国内に広く分布)から伊豆諸島で分化した後,本州(房総半島)へ逆移入・定着してきたことを想起させる.本研究では,(1)イズノシマダイモンジソウでは伊豆諸島から本州への逆移入が起きたのか,(2)房総半島ではなぜダイモンジソウは分布せず,イズノシマダイモンジソウだけが分布するのか,(3)イズノシマダイモンジソウが祖先種のダイモンジソウから分化してからどれくらいの時間が経過しているのかを,分子データと人工交配実験を用いて明らかにすることを目指しており,これまでの遺伝学的解析により,イズノシマダイモンジソウとその母種であるダイモンジソウは,遺伝的に明確に区別できることを明らかとすることができ,今年度は伊豆諸島での調査を行うことができた.今後,さらに詳細な遺伝学的解析および人工交配実験を行うことでイズノシマダイモンジソウが伊豆諸島で分化した後に本州に逆移入・定着したことを検証する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は伊豆諸島において,生態学的解析用の試料収集を行うことができた.移植による影響のため花をつける個体が少なく,複数個体による生態学的解析は行うことはできなかったが,これらのサンプルからDNA抽出を行い,これまでに引き続き遺伝的解析を重点的に進めることにより,現在までの進捗状況としてはおおむね順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は昨年度に引き続き遺伝学的解析を進めるとともに,今年度収集した試料による生態学的解析を行う予定である.
|
Causes of Carryover |
昨年度行う予定であった試料収集を当該年度に行うことができたが,新型コロナの影響が大きく,今年度育成管理環境下での複数の開花個体を得ることはできなかったことにより,次年度使用額が生じたが,次年度は今年度収集し移植した試料を用いて,生態学的解析を行うために使用予定である.
|