2021 Fiscal Year Annual Research Report
等脚目キクイムシ属の食性多様性と種分化および消化酵素系の適応
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19K06822
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
朝川 毅守 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (50213682)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Limnoria / ワラジムシ目 / ホスト転換 / 種分化 / 種多様性 / 糖質活性酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
海藻食キクイムシの系統解析に関して,前年度までに全国から採集された海藻食キクイムシについて,系統解析とSpecies Delimitation Analysisおよび祖先分岐点の食藻と分布海域を推定した.その結果,食藻の住み分けによって大きく3つの系統に分化し,さらに海域の住み分けにより,各系統が2~3の系統に分化していることがわかった.褐藻のホンダワラ属を食藻とする系統について,Limnoria asperaとして記載した. 海藻食キクイムシの消化酵素に関して,太平洋側で褐藻のウミウチワから,Limnoria furcaを採集し,30個体を1サンプルとしてRNAを抽出し,RNA-seqを行った.アッセンブルにより得た配列に対して,Blastすることよりヘモシアニンの配列を検出して発現量を取得し,さらにdbCANメタサーバーを使い,発現している糖質活性酵素の種類と発現量を取得した.ヘモシアニンは木材食のキクイムシにおいてリグニンの分解に働いているが,褐藻食のキクイムシにおいても非常に高発現していた.糖質活性酵素の種類は木材食キクイムシと褐藻食キクイムシで大きな差は無いが,発現量が変化していることがわかった.セルロースを分解するGH7はどちらも高発現するが,木材食キクイムシで高発現しているGH9は,褐藻食キクイムシではほとんど発現していなかった.一方木材食キクイムシでほとんど発現していないGH16が,褐藻食キクイムシにおいて高発現していた.GH16は褐藻類の同化産物であるラミナラン分解酵素を含むため,ラミナランの分解に適応して発現している可能性が高い. 褐藻食キクイムシはGH16を高発現させることにより,褐藻食に適応し,その中で,海藻種の住み分けで3つの系統に分かれ,さらに海域の住み分けにより,およそ8つの種に相当する系統の分化が見られることが明らかになった.
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