2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒメミカヅキモの染色体構造と性決定領域に注目した生殖様式の進化機構の解明
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19K06827
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土金 勇樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (20434152)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミカヅキモ / ホモタリズム / ヘテロタリズム / 生殖様式 / ゲノムサイズ / フローサイトメトリー / 染色体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒメミカヅキモには、+型と-型の遺伝的に決定された性を持ち、両性の間で他殖するヘテロタリズム系統(以下、ヘテロ系統)が存在する。また、1細胞由来のクローン細胞の間で接合子をつくり自殖するホモタリズム系統(以下、ホモ系統)が存在する。これら生殖様式の進化はヒメミカヅキモにおいて独立に複数回起きていることが明らかになっている。しかし、どの様に生殖様式が変化するのか、その機構は不明であった。 これまでにフローサイトメーターを用いて、ヘテロ系統13株、ホモ系統6株のゲノム量を明らかにした。またこれらの株のショートリードシーケンスを得ることで、k-mer解析からゲノム量を算出した。更に、ホモ系統3株とヘテロ系統2株のロングリードシーケンスデータとその解析からのゲノム量情報を得ている。様々な手法から得られたゲノム量情報をまとめることで、系統独立にゲノム量の増加、または減少が起きたことを示した。同時に染色体観察を行うことで、ゲノム量と染色体数の関係を明らかにしている。 また、ヒメミカヅキモの一部のホモ系統では、近縁のヘテロ系統の倍程度のゲノム量を保持していた。陸上植物では、染色体の倍数化により自殖化する例が知られている。これらの系統のロングリードシーケンスを得ており、ゲノム構造を比較することで、ホモ化と倍数化の関係の解明を行う予定である。
また、ヘテロ系統のゲノム解析から、-型特異的に存在するCpMinus1遺伝子が発見されている。別系統の野生株においてもCpMinus1遺伝子のホモログの存在を確認した。更に、ホモ系統においても、その存在と有性生殖に特異的な発現を確認した。現在は該当遺伝子の過剰発現株と破壊株の作成を進めており、これらの遺伝子導入株の解析から、性決定遺伝子と接合様式の関係を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
緊急事態宣言による採集計画の中止や、施設入構禁止に伴い、保持する系統の不足、データの不足などがみられた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、ヒメミカヅキモにおけるゲノム量の多様性を明らかにした。複数のホモ系統とヘテロ系統のロングリードシーケンスを得ており、ゲノム解読とそれらの比較から、接合様式特有のゲノム構造の解明を進める予定である。同時に染色体観察の手法のブラッシュアップを行い、ゲノム量と染色体数、接合様式の関係を明らかにする予定である。これにより、ゲノム量の増減が系統独立に生じる機構の解明も期待できる。また、性決定遺伝子を過剰発現させた株、破壊した株を作成し、その表現型から、性決定遺伝子と接合様式の関係を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
緊急事態宣言による採集計画の中止や、施設入構禁止に伴い、計画の進行が遅れたため。
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