2021 Fiscal Year Research-status Report
陸棲ラン藻Nostoc communeの細胞外マトリクスタンパク質の機能解明
Project/Area Number |
19K06828
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂本 香織 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (10367443)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Nostoc commune / anhydrobiosis(無水生活様式) / 細胞外マトリクス / 抗酸化酵素 / 抗酸化タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸菌Escherichia coliで発現させる陸棲シアノバクテリアNostoc communeの細胞外マトリクスタンパク質をコードするDNAのうち、既にクローニングを完了させた遺伝子型A (KU002株)と遺伝子型B (KU006株)のスーパーオキシドディスムターゼ (SOD)、およびKU002株のカタラーゼを、ヒスチジンタグをC末端側に付加した形で合成させる発現コンストラクトを作製し、E. coli BL21 DE3株で発現を誘導した。いずれの酵素ともIPTG添加による菌体内での蓄積が見られたが、KU006株SODとKU002株カタラーゼではそのほとんどが封入体画分に存在していた。低温下で発現誘導すると、KU006株SODとKU002株カタラーゼのいずれとも、蓄積が見られる大腸菌では可溶性画分に検出される割合が増加(全体の20~30%)した。しかしながらいずれの可溶性画分の発現産物とも、ヒスチジンタグを利用したアフィニティークロマトグラフィーカラムに吸着しなかった。またいずれの画分とも、簡易的な酵素活性測定法において低い相対活性しか示さなかった。 N. communeの形質転換系の開発に先立ち、シアノバクテリアにおける発現ベクターpAQ-EX1に抗酸化酵素および抗酸化タンパク質の遺伝子を組み込んだコンストラクトの作製を試みた。その結果、Npun_R3258ホモログ (Dps1)とSODをコードするDNA断片をそれぞれpAQ-EX1に組み込んだコンストラクトを完成させた。一方で、各抗酸化酵素・タンパク質の遺伝子を破壊させるためのコンストラクトの設計を終えたが、作製には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、計画調書に記載した実施項目(1) E. coliでの発現によるN. commune細胞外マトリクスタンパク質の機能解析においては、これまでにN. commune KU002株の細胞外マトリクスタンパク質の発現を一通り試みたが、可溶性画分への蓄積が見られたのがNpun_R3258ホモログ (Dps1)のみで、それ以外(Dps4、カタラーゼ、SOD、WspA)はすべて封入体画分に蓄積したり、可溶性画分に存在した産物でもアフィニティーカラムに吸着しなかったりしたため、機能解析が極めて困難な状態となった。 次に実施項目(3)遺伝子破壊によるN. communeの細胞外マトリクスタンパク質の機能解析では、これまでに取得したクローンまたはPCRによる増幅DNA断片を用いて各遺伝子をコードするDNAをpBluescriptにクローン化する過程で躓いている。原因として、1つには用いている制限酵素が古く活性が低いためにDNAが部分的にしか切断させず、目的DNAの収率を下げていること、そしてもう1つには、これまでにもwspAやsodF遺伝子のクローニングの過程で経験してきたが、leakyな発現産物が大腸菌の生育に著しい影響を与えるために大腸菌の生育を抑制する可能性があり、クローン化が極めて困難であることが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画調書に記載した実施項目(1)においては、大腸菌体内で可溶性タンパク質として検出され、アフィニティーカラムで精製できるDps1の解析を調書に記載した通りに進め、N. punctiformeにおけるホモログと性質や機能を比較・類推する。また前年度にKU002に2種類存在するWspAに対する抗体を作製したので抗血清からIgGを精製してProtein Aカラムに結合させ、N. communeの藻体から抽出した細胞外マトリクスタンパク質をカラムにかけてアフィニティクロマトグラフィーを行うことにより、WspAおよびWspAに相互作用するタンパク質・成分を検出・同定する予定である。 実施項目(3)では、本計画に計上された予算で制限酵素を新たに購入して実験を進め、遺伝子破壊コンストラクトの作製を、低コピーナンバープラスミドをベクターとして使用することも視野に入れ、引き続き試みる。 そして、既存のベクターおよび今年度作製を終えた遺伝子発現コンストラクトを用いて実施項目(2)を開始する。液体培養したN. commune KU002株細胞の超音波処理による単細胞化の条件、およびエレクトロポレーションによる細胞へのDNA導入における印加条件に、ある程度の目途を付けることを目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定されていた国際学会 (ISPP2021)が次年度に延期され、それに伴い本計画に計上していた海外渡航費も次年度に持ち越された。併せて国内学会の大会もオンラインで開催されたため、発表を見合わせた。
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