2022 Fiscal Year Research-status Report
empirical tests of bet-hedging polyandry hypothesis in female insects
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19K06839
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
安井 行雄 香川大学, 農学部, 准教授 (30325328)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 雌の多回交尾の進化 / bet-hedging / polyandry / evolution / 生活史進化 / フタホシコオロギ |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に雄は多くの雌と交尾するほど多くの子供を残せるが、雌は複数の雄と交尾しても(父親が入れ替わるだけで)子供を増やすことはできない。しかし多くの動物で雌は複数の雄と交尾する。この「雌の多回交尾」の進化は行動生態学・進化生態学の重要な研究課題である。 本研究は従来あまり有効でないとみなされてきた両賭け(bet-hedging)仮説を、メタ個体群構造を取り入れた新しい視点から再検討するものである。2022年度はフタホシコオロギ実験個体群において1)1回だけ交尾した雌、2)1)と同じ雄個体と3回交尾した雌と3)その雄個体を含む3雄と1回ずつ交尾した雌の3実験区を設け、雌が産んだ卵の孵化率を測定した。1)と2)の比較から同じ雄と繰り返し交尾することで、交尾失敗を回避できる可能性(1回なら偶然失敗することがあるが3回続けて失敗することはあまりない)を検証し、2)と3)の比較から複数雄との交尾が不妊雄(何回繰り返しても受精できない)を回避する機能を持つ可能性を検討した。前年度の実験では供試雄は幼虫期に隔離して羽化させた未交尾雄であったため精子の消耗がなく不妊や交尾失敗の生じる確率を過小評価している可能性があったので、今年度はストックカルチャーからランダムに抽出した交尾経験が様々な雄を供試した。同時に実験を行うサンプルをブロックと呼び、複数のブロックを同一家系の連続した複数世代と疑似的にみなし、世代間幾何平均適応度を比較したところ、同一雄との交尾回数の増加は偶発的な交尾失敗の回避には有効であるが不妊雄の回避には複数雄との交尾が必要であることが実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実証研究において2本の論文を出版し、理論研究においては雌の多雄交尾にとどまらず生活史進化まで含めたbet-hedging理論の拡張を行い、また進化生物学のより根源的な課題である有性生殖の進化に研究を拡大させた。5年の研究期間の4年間で7本の論文が出版され3本が投稿準備中となっており予想以上の波及効果である。実験研究においては計画通りの実験を実施でき、おおむね予測と合致する結果が得られている。総合すると計画以上の進展と言える。 また雌の多雄交尾にとどまらず配偶子による有性生殖gametic sexual reproductionと異型配偶子生殖anisogamyの起源について理論論文を公表した。同論文は、掲載誌Journal of EthologyのEditor’s Choice Award 2022(その年の掲載論文から、最も優れた論文に与えられる論文賞)を受賞したばかりでなく、出版元であるSpringer-Nature社から2022 Research Highlights - Evolutionary Biologyに選ばれた。同社のNatureを筆頭とする学術雑誌は数百に上り、その年に公表された進化生物学の論文は1万編を超える中で大きな科学的ブレイクスルーを成し遂げた最もインパクトのある論文9編中に入ったことは特筆される。また研究の社会的影響力の指標であるAltmetric = 131で、全ての分野の全てのソースで23,539,593件の研究成果が追跡されたなかで、この論文は特に良く、98パーセンタイルに位置している:Altmetricによって追跡されたすべての研究成果の上位2%に位置しているということである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究計画通りフタホシコオロギでのbet-hedging polyandry理論の更なる検証実験を行うとともにgood sperm仮説を検証する実験も行う。特に雄の精子競争能力と子孫の生存力の関係を精密にデザインされた飼育実験で検討する。学会での研究発表や論文執筆は成果を受けて適宜行う。
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Causes of Carryover |
令和4年度は理論研究に不可欠なコンピューターと数理解析ソフトウェア、モデル生物を使った実証実験のための備品・消耗品を購入したが、次年度出版予定の論文のオープンアクセス費用(NatureのGold Open Access約160万円)に充てるため予算を残した。
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Research Products
(12 results)