2019 Fiscal Year Research-status Report
雌の配偶者選択の柔軟性が性的二形の進化に及ぼす影響の解明
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19K06843
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
高橋 大輔 長野大学, 環境ツーリズム学部, 教授 (90422922)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 性淘汰 / 雌の配偶者選択 / 配偶者選択の柔軟性 / 性的二形 / 保護エフォート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、性淘汰理論の研究分野において不明であった雌の配偶者選択の柔軟性の決定要因の解明とその柔軟性が性的二形の進化に及ぼす影響を明らかにすることである。応募者は、配偶者選択が雌の適応度上昇に重要な種ほど、選択性が変化しづらく、性淘汰圧が強まるため性的二形が顕著になるという仮説を提案する。本仮説の検証のために、雄が卵保護し、卵サイズに応じて配偶者選択の重要性が異なると予想されるハゼ科ヨシノボリ属魚類の3種を対象とした水槽実験を行う。そして、卵サイズが大きく、雄の保護エフォートが高い種ほど、雌の配偶者選択性が変化せず、性的二形が顕著になるかを検討する。 2019年度は、配偶者選択コストと雌の配偶者選択の柔軟性との関係を知るために、卵サイズが小さく、雄の保護エフォートが低いビワヨシノボリを対象に配偶者選択コストを操作した水槽実験を行った。雄を巡る競争相手となる雌が不在の水槽(競争雌不在:配偶者選択コストが低い)において、雌は背鰭の短い雄を好んだ。一方、競争相手の雌が3個体入った水槽(競争雌在:配偶者選択コストが高い)においては、雌は無作為に雄を選んだ。この結果は、雄の保護エフォートが低い本種において、配偶者選択にコストがかかる場合、その選択性が容易に変化することを示唆し、本研究の仮説を部分的に支持するものである。 そして、雌の配偶者選択の柔軟性が性的二形の進化に及ぼす効果を把握するために、ビワヨシノボリにおいてモルフォメトリー手法を用いた雌雄の形態比較を行った。その結果、背鰭の発達の程度や頭部のサイズにおいて雌よりも雄の方が大きいという雌雄差(すなわち性的二形)が顕著にみられた。今後は、卵サイズの異なるヨシノボリ類において同様の分析を行い、種間比較を通して、雌の配偶者選択の柔軟性の程度と性的二形の程度との対応関係を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、当初計画していた実験を全て実施することでき、そして本研究の仮説(配偶者選択が雌の適応度上昇に重要な種ほど、選択性が変化しづらく、性淘汰圧が強まるため性的二形が顕著になる)を部分的に支持する結果が得られた。また、本研究の仮説を検証するためには、雄の保護エフォートが異なる3種のヨシノボリ類において共通の実験を行い、雌の配偶者選択の柔軟性や性的二形の程度を種間で比較する必要があるが、2019年度において、実験の細かな設定などをほぼ確立することができたため、2020年度以降もスムーズに研究を遂行することが可能であると考える。 以上より、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染拡大を受け、現時点(2020年4月)において所属大学から国内外における移動制限が要請されている。よって、2020年度は、2021年度以降に実験対象とする予定であったカワヨシノボリ(大学が立地する長野県内で採集可能:卵サイズが大きく、雄の保護エフォートが大きい)を用いて、配偶者選択コストと雌の配偶者選択の柔軟性との関係を知るために、配偶者選択コストを操作した水槽実験を行う。また、雌の配偶者選択の柔軟性が性的二形の進化に及ぼす効果を知るために、モルフォメトリー手法を用いた雌雄の形態比較から性的二形の程度を評価し、昨年度に明らかとなったビワヨシノボリとの比較を行う。 加えて、ビワヨシノボリを材料に、雄の卵保護実験を行い、昨年度に明らかとなった雌が配偶者選択の手がかりとする雄の形質(背鰭サイズ)と卵保護能力との関係や卵保護が雄の生理的コンディションに及ぼす影響について水槽実験により調べる予定である。本種は滋賀県琵琶湖固有種であり、採集には県外への移動を伴うため、採集時期を予定の5月から7月頃にずらすなど計画を変更して実施したい。他のヨシノボリ類と比べて本種の繁殖期は長いため、採集時期をずらしても実験遂行は可能と判断する。ただし、コロナウィルスの状況によっては今年度の本種の採集を中止し、2021年度以降に実験を実施することとしたい。 そして、当初計画では、第18回国際行動生態学会大会(2020年10月オーストラリア・メルボルン)において2019年度の研究成果を報告する予定であったが、コロナウィルスの感染拡大により、開催が2022年9月に延期となった。そのため、本年度は日本生態学会(2021年3月予定)など国内学会での報告のみに留める予定である。ただし、コロナウィルスの状況によっては今年度の学会大会での報告は中止とし、2021年度以降に実施することする。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた最も大きな理由は、コロナウィルス感染拡大により、当初参加を予定していた日本生態学会大会(2020年3月・名城大学・計画書では国内旅費100000円を計上)が中止になったためである。また、当初の計画では実験終了後に対象魚を採集地点に放流する予定だったが、生魚の状態で外部形態の詳細な計測を行うことが想定していたよりも困難であったため、対象魚は全て標本にして計測を行った。そのため、対象魚類の放流に係る旅費(2019年10月・滋賀県琵琶湖・計画書では国内旅費50000円を計上)を行わなかったことも、当該助成金が生じた理由である。 当該助成金は、2020年度分として請求した助成金と合わせて、より実験効率を上げるための消耗品費(飼育用水槽や実験水槽の拡充など)に充てる予定である。
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