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2019 Fiscal Year Research-status Report

深海性多毛類腸管内硫黄化合物は金属および硫化水素無毒化に貢献するか

Research Project

Project/Area Number 19K06844
Research InstitutionNihon University

Principal Investigator

小糸 智子  日本大学, 生物資源科学部, 講師 (10583148)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywords硫化水素無毒化 / タウリン関連化合物 / 深海性多毛類 / 金属元素
Outline of Annual Research Achievements

2019年度は、硫化水素無毒化と腸管内細菌の関係性に着目した。まず、マリアナイトエラゴカイおよび深海性ウロコムシ類腸管からDNAを抽出し、16S rRNAのメタゲノム解析を実施し、菌叢を比較した。その結果、全ての検体でProteobacteriaが優占していた。その他の分類群は多くても0.2%程度しか存在していなかった。両種ともに腸管内から最も多く検出されたのはVarivorax属であり、代表的な硫黄酸化細菌は検出されなかった。マリアナイトエラゴカイとウロコムシ類は同所的に生息することから、類似した細菌叢を示したものと考えられる。化学合成生態系を構成する無脊椎動物の硫化水素無毒化に寄与していると推察されているタウリン関連化合物(タウリン、チオタウリン、ヒポタウリン)量をHPLCにより分析した。両種を比較すると、いずれも体壁でタウリン関連化合物量が多く蓄積されていた。また、マリアナイトエラゴカイ腸管からはヒポタウリンがほとんど検出されなかったが、ウロコムシ類腸管では体壁とほぼ同等のタウリンが検出され、マリアナイトエラゴカイと比較するとチオタウリンは約5倍、ヒポタウリンは約900倍多く蓄積していた。予備実験のEDSによる組織中の元素分析で多量に検出された鉄、亜鉛、砒素、硫黄についてICP-OESを用いた元素分析を実施した。鉄はマリアナイトエラゴカイ腸管で最も多く検出された一方、ウロコムシ類腸管では検出されなかった。体壁は逆の結果となり、ウロコムシ類はマリアナイトエラゴカイの2倍以上の鉄が存在した。亜鉛は両種ともにほとんど検出されず、砒素はマリアナイトエラゴカイ体壁で検出されたがその腸管、ウロコムシ類の組織からはほとんど検出されなかった。これらのことから、ウロコムシ類はチオタウリン合成、マリアナイトエラゴカイは硫化鉄合成によって硫化水素無毒化を行なっている可能性が示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2019年度は凍結保存した組織を中心として、タウリン関連化合物分析、元素分析を実施することができ、同所的に生息するマリアナイトエラゴカイとウロコムシ類の環境適応戦略の相違について基礎的知見を得ることができた。また、RNA-Seqのパスウェイ解析により、金属輸送や硫黄代謝に関与する輸送体や酵素遺伝子を探索することができた。さらに、2020年1月に研究航海があり、マリアナイトエラゴカイおよびウロコムシ類の採集と鉄曝露実験を実施することができた。したがって、ここまでの進捗は概ね順調である。

Strategy for Future Research Activity

2020年度は、硫黄曝露、鉄曝露を実施したマリアナイトエラゴカイを用いて元素分析、タウリン関連化合物分析を実施するとともに、金属輸送および硫黄代謝に関与する遺伝子のcDNAクローニング、発現解析に着手する予定である。また、2020年1月に実施された研究航海では採集したマリアナイトエラゴカイおよびウロコムシ類を複数の固定液に浸漬した。これらを用いて電子顕微鏡観察を行ない、硫黄化合物球の細胞内での詳細な局在を調べたい。また、EDSによる元素マッピングを実施し、組織内での金属元素と硫黄の分布様式を明らかにしていく。

Causes of Carryover

2019年度は深海性多毛類の解剖のため、実態顕微鏡の費用を計上していたが、当初予定していた設置型の顕微鏡よりも船上などのフィールドで使用できるキャリーケース付きの機種に変更したため、設備備品費の金額が変更となった。また、分析で借用しているHPLCにオートサンプラーが導入されたことにより、都度調整していた試薬の調整量が少なくなったため、試薬代やプラスチック器具の消費が予定より少なくなった。次年度の使用計画は、2020年1月の研究航海で深海性多毛類の電子顕微鏡観察および組織学的解析用に固定を行ったため、組織観察に係る試薬、国内旅費(海洋研究開発機構)に使用する。また、船上で深海性多毛類の鉄曝露実験を実施したため、遺伝子解析、アミノ酸分析、元素分析に係る試薬、プラスチック消耗品、国内旅費(東京大学大気海洋研究所、愛媛大学)として使用する。

  • Research Products

    (1 results)

All 2019

All Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Presentation] A possible hydrogen sulfide detoxification mechanism in deep-sea hydrothermal vent-endemic polychaeta2019

    • Author(s)
      Koito, T., Ito, Y., Suzuki, A., Suzuki, M., Mitsunobu, S., Sugimura, M., Inoue, K.
    • Organizer
      Marine Biotechnology Conference 2019
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2021-01-27  

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